Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画32 産婦人科:産婦人科領域における超音波治療

(S275)

HIFUの臨床応用に向けた基礎研究-子宮筋腫および胎児治療への応用-

HIFU basic study for clinical application-therapy for uterine fibroid and fetal disease-

市塚 清健, 市原 三義, 石川 哲也, 松岡 隆, 岡井 崇

Kiyotake ICHIZUKA, Mitsuyoshi ICHIHARA, Tetsuya ISHIKAWA, Ryu MATSUOKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

【目的】
HIFUを用いて小動脈を閉塞することが治療となりうる産婦人科領域の疾患として子宮筋腫および胎児疾患を想定した.血管壁は血流によるcooling作用のため加熱が困難で組織変性が起こりにくく,HIFUによる血流遮断の研究は遅れていた.そこで,HIFU照射により血管を閉塞し,血流を遮断できるか,血流遮断後の当該血流支配領域の組織学的,腫瘍体積変化,胎仔でも遮断ができるかを確認することを目的とした.
【方法】
I. HIFU照射による小動脈の閉塞と諸条件の検討; 超音波強度に関する検討:照射対象はSDラットの大腿動脈とした.ラットを脱気水中に固定し実験を行った.血管をカラードプラで描写し,照射時間を5秒としてHIFU照射を行った.HIFU振動子の周波数は3.2MHzを用いた.超音波強度を530,1080,2750,4300W/cm2と変化させ収縮期最高血流速度(PSV)を計測,血流遮断の有無を検討した(各群n=10).II.血管閉塞による血流支配領域の組織および腫瘍サイズの変化の検討; 1) 血管閉塞による支配領域組織変化の検討:照射対象はJapanese-Whiteラビットの腎葉間動脈とした.照射時間を5秒として4000 W/cm2の超音波強度で HIFU照射を行った.血管閉塞直後,2日後,7日後に腎臓を摘出しHIFUによる血流遮断が支配領域の組織に与える影響を病理学的に検討した(n=8).; 2) 栄養血管閉塞による腫瘍の増大抑制効果の有無および組織学的変化の検討:JWラビット大腿に腺扁平上皮癌細胞株であるVX2を移植し,移植後3週間後に栄養血管に対し照射条件II-1)と同様のHIFU照射を行った.1週間後に腫瘍の体積を超音波で計測し,照射群(n=7)と非照射群(n=7)で比較した.体積計測後腫瘍を摘出し病理学的に検討した.IIIラビット胎仔胎内血管閉塞実; JW系妊娠25日家兎母獣を仰臥位で固定しHIFUを母獣腹壁から胎仔臍動脈にた.1)目的胎仔の臍動脈が閉塞可能な強度の検討; 超音波強度を1550W/cm2から開始しステップアップさせた.胎仔の死亡は超音波断層法により心拍動の消失で診断した.2) 母獣およびHIFU非照射他胎仔の皮膚および心拍数への影響3)HIFU照射した血管及び周囲組織の病理組織学的変化の検討.実験後組織をHE染色で評価した.
【結果】
I.照射血管径は約0.5mm,照射前のPSVは19.8 ± 4.69 cm/sec(mean±SD)であった.530,1080,2750W/cm2のHIFU照射では血流は遮断されなかったが,照射後のPSVは強度に応じて増加した(p<0.05).4300W/ cm2照射では直後に血流遮断が得られた.II.1)複数回のHIFU照射で血流の遮断が可能であった.血流遮断直後に造影超音波画像で支配領域の造影欠損像,病理組織で血管の閉塞像が見られたが,支配領域の組織変化は認められなかった.7日後の病理組織で,同領域の梗塞性壊死変化が見られた.2) 腫瘍平均体積増大率はコントロール群で527.6±462.1%であったのに対し,照射群では198.0±109.7%であり,両者とも1週間後には腫瘍の増加傾向が見られたが,腫瘍増大はコントロールでは有意 (P=0.028)であったが,HIFU照射群では有意でなく(p=0.063),栄養血管へのHIFU照射により腫瘍増加を抑制できる可能性が示唆された.III.1)2750 W/cm2 15サイクルのHIFU照射で臍動脈の血流遮断が可能であり,当該胎仔は死亡した.2) 母獣皮膚に軽度熱傷が認められたが,他胎仔の皮膚には問題なく心拍数の変化はともに認められなかった.3) 血管の中膜および内膜に空胞変性がみられた.
【結論】
HIFUを用いて小動脈の閉塞が可能なことが示された.栄養血管を閉塞させることで子宮筋腫や胎児仙尾部奇形種など胎児腫瘍の縮小効果が得られる可能性が示唆された.今後低侵襲な治療法としてのHIFUの臨床応用が期待される.