Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画32 産婦人科:産婦人科領域における超音波治療

(S275)

子宮筋腫に対する集束超音波治療

Focused ultrasound surgery for uterine fibroid

森田 豊

Yutaka MORITA

板橋中央総合病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Itabashi Chuo Medical Center

キーワード :

 子宮筋腫に対するMRIガイド下集束超音波治療(Focused Ultrasound Surgery, FUS)は,2004年10月,米国FDAにより症状を有する子宮筋腫に対する有効な低侵襲治療として承認され,国内外で注目されつつある.2009年秋,国内でも薬事承認を取得するとともに,日本産科婦人科学会からの使用開始時トレーニングプログラムの認定も得られた.本治療は,侵襲が少なく手技に伴う合併症が少ないこと,早期の社会復帰が可能であることから,多忙で治療日数がとりにくい女性に対し,有効な治療手段となりうる.患者はMRIの台の上にうつぶせになり,台の下から発する超音波(約1MHz)のエネルギーを虫めがねのように一点に集めることで,組織の温度変化をリアルタイムでモニターしながら,子宮筋腫を壞死させていく.20秒照射,90秒冷却を繰り返し,筋腫は60〜80度の熱で壊死に陥り,おおよそ3〜4時間で治療は終了し,その後,筋腫は数ヶ月かけて縮小する.これまでの報告では,約80〜90%の症例の症状緩和に,有効であるとされてきた.
下腹部の皮膚に切開創のある症例では気泡を生じ熱傷の原因となる可能性があるため適応外となる.また,筋腫核が10cm以上であったり,4個以上の筋腫を有する症例では治療時間が長時間になるため適応外である.筋腫と腹壁の間に腸管が介在する症例も,照射野に空気が入るため対象外となる.また,変性が強い筋腫も熱が上昇しないため対象とならない場合が多い.
本治療法は,漿膜近くの筋腫の一部を結果的に残存させてしまう治療法であるために,治療後の再発が一つの課題として考えられる.当院においてはこれまでに,当院倫理委員会の承認のもと,患者より十分なインフォームドコンセントを得て,2004年12月より,197症例に対してFUSを施行してきた.治療開始当初より子宮筋腫病巣の辺縁近くまでの照射を行い,高い照射率(non perfusion volume,NPV)を得るよう努力してきた結果,本治療としては比較的低い再発・再燃率を得ることが可能であった.治療後,5年〜6年6カ月の追跡調査を行った90例のうち,手術等の他の治療が必要となった症例は,6例(6.6%)であった.数年後に再発が起きた場合に,偽閉経療法を施行できるような年齢であれば,侵襲の高い手術等を回避することもできる.したがって,適応症例の抽出にあたっては,年齢,症状,患者の社会的背景を含めて,個別に評価することが肝要である.
 本治療について,当院の治療成績や臨床上の問題点を挙げつつ,国内外における多施設共同研究による報告も含めて考察したい.