Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画31 領域横断:超音波の診断基準を論じる

(S272)

超音波ドプラ法による拡張障害の分類:新分類の提唱

Classification of Diastolic dysfunction by Doppler method: Proposal of new diastolic dysfunction grade

大谷 恭子, 竹内 正明, 加来 京子, 春木 伸彦, 芳谷 英俊, 尾辻 豊

Kyoko OTANI, Msaaaki TAKEUCHI, Kyoko KAKU, Nobuhiko HARUKI, Hidetoshi YOSHITANI, Yutaka OTSUJI

産業医科大学第2内科学

Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health

キーワード :

【背景】
超音波ドプラー法による拡張障害の分類は日常臨床でルーチンに行われている.拡張障害の分類にはいくつかの報告があり,正常型,弛緩障害型,偽正常型,拘束障害型の4型に分類されているが,いずれの分類でもこれら4型に当てはまらない症例が一定数存在することを経験する.我々はRedfieldらの分類(JAMA, 2003)を使用した際に,「E/A<0.75,DcT>140ms,E/E’>10」の症例が分類不能症例の大多数を占めることに着目し,新たな拡張障害の一型として提唱できるのではないかと考えた.本研究の目的は,2Dスペックルトラッキング法を用いることにより,「E/A<0.75,DcT>140ms,E/E’>10」群の左房機能を評価し,拡張障害の一型としての特徴を有するかを検討することとした.
【方法】
心尖四腔像における左房壁を2Dスペックルトラッキング法でフレーム毎にトラッキングし,左房容量曲線を得た.最大,最小,左房収縮直前の左房容量 (LAVmax,LAVmin,LAVpre-A)を計測した.リザーバー機能としてexpansion index((LAVmax-LAVmin)/LAVmin×100),diastolic emptying index((LAVmax-LAVmin)/LAVmax×100)を,導管機能としてpassive emptying % of total emptying((LAVmax-LAVpre-a)/(LAVmax-LAVmin)×100)を,ブースター機能としてactive emptying % of total emptying((LAVpre-a-LAVmin)/(LAVmax-LAVmin)×100)を算出した.
【結果】
対象375例中,118例が分類不能であった.そのうち,「E/A<0.75,DcT>140ms,E/E’>10」に当てはまる症例は99例(84%)であった.左房容量は拡張障害の重症度にそって拡大しており,新たな群は弛緩障害型と偽正常型の間に位置していた.ブースター機能であるactive emptying % of total emptyingは新たな分類で最大となり,その後偽正常型から拘束障害型になるにつれ小さくなっていた.
【結語】
「E/A<0.75,DcT>140ms,E/E’>10」群は,拡張分類の弛緩障害型と偽正常型の間に位置することが示唆された.