Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画31 領域横断:超音波の診断基準を論じる

(S272)

卵巣腫瘤のエコーパターン分類では,(境界)悪性腫瘍である可能性が表示されている

Echo Pattern Classification of the Ovarian Masses by JSUM 2000 Showes the Probabilities of (Borderline) Malignant Tumores

赤松 信雄

Nobuo AKAMATSU

姫路赤十字病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Japanese Red Cross Society Himeji Hospital

キーワード :

1)卵巣腫瘤のエコーパターン分類2000には,悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性がエコーパターン毎に表示されていることが,他の超音波診断基準にみられない大きな特徴である.他の超音波診断基準では悪性腫瘍に多い所見が記載されているが,その所見が観察されると悪性腫瘍である可能性が何%あるかは判らない,各所見の悪性腫瘍・境界悪性腫瘍に対する重みが不明な診断基準が多い.
 一方,卵巣腫瘤のエコーパターン分類2000では各エコーパターン毎に悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性が表示されている.即ち,Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型では3%以下,Ⅳ型では約50%,Ⅴ型では約70%,Ⅵ型では約30%とされている.
 この卵巣腫瘤のエコーパターン分類2000よりも後に公示された診断基準で,各所見の(境界)悪性腫瘍である可能性が表示されないことは残念至極である.
2)卵巣腫瘤のエコーパターン分類2000での(境界)悪性腫瘍である可能性の表示に使用された元データは,1988年から1992年までの経腹走査超音波像に基づいている(総数に対する悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の比率が22%).その後の経腟走査の普及により超音波像の画質は向上した.
 また,1992年に発表した卵巣腫瘤のエコーパターン分類案から「案」が取れたため,1997年から2000年までの経腟走査超音波像によりエコーパターン毎の悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性を評価すると,Ⅰ型0%,Ⅱ型0%,Ⅲ型2%,Ⅳ型32%,Ⅴ型70%,Ⅵ型59%であったと報告した(総数に対する悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の比率が33%).総数に対する悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の比率が50%上昇したにもかかわらず,Ⅳ型に占める悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の割合は低下を示した.一方,Ⅵ型に占める悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の割合は上昇を示した.
3)今回,2008年からの経腟走査超音波像を用いてその有用性を再評価し,報告する.166例の主として経腟走査超音波像によりエコーパターン毎の悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性を評価すると,Ⅰ型0%,Ⅱ型9%,Ⅲ型0%,Ⅳ型50%,Ⅴ型52%,Ⅵ型19%であった(総数に対する悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の比率が21%).
 異なる3時期のエコーパターン毎の悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性を比較すると,10%以上の違いがあるⅣ型,Ⅴ型,Ⅵ型の悪性腫瘍・境界悪性腫瘍である可能性を多数例の経腟走査に合わせて改定することが望ましいと思われる.その際,総数に対する悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の比率をいかにするかも問題点として挙がってこよう.
【文献】
1)赤松信雄,他:卵巣腫瘤のエコーパターン分類と組織診との関連性について,日超医論文集61:325-326, 1992.
2)赤松信雄,他:卵巣腫瘤のエコーパターン分類と組織診との関連性について(2)良性腫瘍・類腫瘍病変,日超医論文集62:579-580, 1993.
3)赤松信雄,他:卵巣腫瘤のエコーパターン分類と組織診との関連性について(3)エコーパターンと詳細所見による各卵巣腫瘍の確率について,日超医論文集63:513-514, 1993.
4)岡井崇:超音波医学27:912, 2000.
5)赤松信雄,他:卵巣腫瘤のエコーパターン分類2000の有用性の検討(抄録),超音波医学28:J622, 2001.