Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画31 領域横断:超音波の診断基準を論じる

(S271)

国内広域調査から得られた頸動脈スクリーニング評価法の実際

The real carotid ultrasonography screening evaluation system by the wide area questionnaire

小谷 敦志1, 4, 濱口 浩敏2, 4, 久保田 義則4, 三木 俊4, 今西 孝充4, 椿森 省二4, 浅岡 伸光4, 天野 幾司4, 松尾 汎3, 4

Atsushi KOTANI1, 4, Hirotoshi HAMAGUCHI2, 4, Yoshinori KUBOTA4, Takashi MIKI4, Takamitsu IMANISHI4, Shoji TSUBAKIMORI4, Nobuaki ASAOKA4, Ikuji AMANO4, Hiroshi MATSUO3, 4

1近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2神戸大学医学部附属病院神経内科, 3医療法人 松尾クリニック, 4血管エコー研究会(大阪)

1Department of Clinical Laboratory, Kinki University Hospital, 2Department of Neurology, Kobe University Hospital, 3Matsuo Clinic, 4The Vascular Echo Meeting(Osaka)

キーワード :

【背景】
我が国では日本超音波医学会と日本脳神経超音波学会から頸動脈エコー検査に関してのガイドラインが提唱されている.両ガイドラインの評価方法は大筋では似通っているものの,定義や表現などいくつかの相違点がある.多くの施設のスクリーニング評価方法は,検査時間という制約の中でデータの有用性や妥当性から臨床医や検査担当者らが独自の評価方法を行っており,1つのガイドラインに則った,画一的な内容で評価しているとは言い難い.
【目的】
各施設の頸動脈エコーで行われている評価内容を集約し,スクリーニング評価方法の現状を調査する.
【対象と方法】
血管診療技師あるいは血管超音波検査士が在籍し,ランダムに選択した全国61施設に対し,頸動脈エコースクリーニング検査のアンケートを依頼し集計した.アンケート内容は,1.必須項目と重症度判定で重視する評価方法,2.両ガイドラインで相違のある所見の計測法や表現法などの使用状況,3.各評価項目における計測項目の再現性や妥当性の実際,4.血流速度測定の実際,5.報告様式と所見作成方法,6.再現性を良くする工夫,などの項目を提示した.
【結果】
回答は49施設から得られ,回収率は80.3%であった.評価項目について,80%以上の施設でmax IMT,プラーク厚,プラーク内部性状,CCA血流速度,ICA血流速度,VA血流速度を評価していた.一方,プラーク数,プラークスコア,ECA血管径については50%以上の施設で計測していなかった.検者再現性については,max IMT,CCA血管径,プラーク厚,プラーク表面性状,CCA血流速度で再現性がよいという印象をもっており,mean IMT,ICA血流速度,VA血流速度については再現性が悪い印象であった.max IMTとmean IMTの計測法と算出法は,多くの施設が日本超音波医学会の基準を採用していたが,プラークの定義においては,日本脳神経超音波学会の基準を採用している施設が多数であった.一方で,プラーク性状評価の判定については,両学会の基準を合わせて用いられていた.狭窄の重症度評価では,最も重要視する評価法は狭窄部の最大血流速度であり,次いで径狭窄率,面積狭窄率であった.また,ガイドラインに記載されていない検査項目を,研究目的以外で独自で計測している施設は認めなかった.報告書についてはほとんどの施設でデジタル書式であり,シェーマと写真を添付して報告している施設が多かった.再現性を良くするための工夫として,空間的計測位置や時相の統一,前回値を参照とするといった回答が多かった.
【考察・結語】
今回のアンケート結果から,各施設で項目ごとに両ガイドラインを使い分けている現状が判明した.一方でガイドラインからはずれた検査項目を構築している施設は認めなかった.現ガイドラインは,いずれも計測・評価に必要な基準を網羅しているため当然必要な指針ではあるが,実診療においては,ガイドラインを元にして,各施設の立場に応じた最適な計測・評価方法を改めて検討する必要があると実感した.今後はさらにアンケート内容とガイドラインを吟味して,実診療に基づいた検査指針を構築したい.