Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画29 領域横断:技師の技糧の精度管理

(S262)

超音波検査士に望むこと

Expert Sonographers

田中 幸子

Sachiko TANAKA

大阪府立成人病センター検診部

Department of Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer & CVDD

キーワード :

本特別企画は“技量の精度管理”がテーマであるので,技量を数値化して評価しそれを高く保つための方策について討議することを想定して企画されたように思われる.例えば,“1時間当たり平均何件以上の検査を行い,限局性病変の偽陽性率,偽陰性率はそれぞれ何%以下におさえる”というような数値目標を設定し,これを技師に求めるといったことを意味するのであろうか.最近は客観的評価のための数値化と数値に基づいた目標設定が広く行われるようになっている.しかし,私自身は技師の技量を数値化してシステム的に精度管理した経験を持ち合わせていないし,数値化については特にコメントすることもない.従って本特別企画の主旨とは多少ずれるかもしれないが,自施設での超音波検査担当技師の教育における経験に基づき私見を述べさせていただく.まず,超音波検査士に求めることを,腹部を例に挙げて段階的に記載する.
第1段階:正常超音波解剖と装置の基本的取扱いを知り,基本的走査ができる.
第2段階:観察すべき領域を漏らさず観察し,求められた異常所見を逃さず検出できる.
第3段階:装置の機能をその音響学的意味を理解したうえで十分に使いこなすことができる.
第4段階:どんな疾患の際に,どんな病態が現れる可能性があり,その病態はどんな超音波所見として認識できるのかを知識として知り,その所見をうまくとらえることができる.依頼目的以外の重要情報をも提供できる.それでは,優秀な超音波検査技師になるためにはどのような条件が必要であろうか.本人の適性と意欲は必須条件であり,さらに意欲を持続させ得る環境であることが望ましい.よい環境は本人が自発的に作り出す積極性が必須であるが,超音波医学に造詣のある専門医の協力が重要であろう.
1.適性:適性の有無を予め知るには,まず実際の検査を見学し,装置を使って自分の身体を走査してみることを勧める.楽しそうだ,興味を持てそうだと感じたら,適性ありと考えてよいと思う.
2.意欲:最も大切な要素であるが,自ら希望して超音波検査業務に従事しようとする人は意欲を持って臨んでいるはずである.その意欲を持続させることが必要であろう.
3.意欲を持続させることができる環境 
1)適切な目標 
a.日本超音波医学会認定超音波検査士の受験   
b.学会や研究会での発表や論文発表
2)新人技師の指導
3)診断装置の新しい機能や新技術を使いこなす取り組み
4)他の画像診断や手術所見などとの比較・検討(症例検討会への参加)  
超音波検査は人にも地球環境にも優しく,しかも丁寧に行えば豊富な医療情報を得ることができる診断法である.しかしながら現実には超音波診断法の長所が十分に活かされていない医療現場も少なくないように思われる.超音波検査の多くは検査技師が担当しているので,優秀な超音波検査士が多数育ち,医師とのよい協力関係を築くことで日本の医療を支えていただきたいと思う.