Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画28 領域横断:画質向上の新技術と時間分解能向上の新技術

(S260)

ステアリングビームの応用による新しいエコーイメージングおよび変位計測

New echo imaging and displacement measurement using steering beams

炭 親良

Chikayoshi SUMI

上智大学理工学部情報理工学科

Information & Communication Sciences, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
 我々は,ビームステアリングおよびアポダイゼーションを用いたビームフォーミングにより,従来のエコーイメージングとは異なり,横方向にもビーム方向と同等の周波数をもつ高分解能なイメージングを行っている(例えば,[1]).我々は,交差するステアリングビームの重ね合わせにより実現できるこの方法を横方向変調法(LM: lateral modulation)と称している.また,イメージングの高分解能化のために新しい仮想音源も提案している[2].超音波放射方向前方にて,積極的に散乱体や回析格子を活用する.LMは,横方向の変位もビーム方向のそれと同程度の高い精度で計測できる変位ベクトル計測をも実現する.血流や組織変位,弾性の計測に応用できる.具体的には,計測対象の変位方向を意識することなく,トランスデューサをあてがうのみで,心腔内の血流ベクトルや頸動脈内等の横方向の血流,任意方向の組織変位(心や肝の複雑な3次元動態等)の計測が可能になる.また,LMとは異なり,1つの偏向角度を持つビームステアリング(ASTA:a steering angle)を行うビームフォーミング[3]でも,変位ベクトルや横方向変位の計測が可能であることを報告する.LMに比べて精度は低くなるが,ビームフォーミングが簡単で,組織の音響特性の不均質性に強く,また,有効開口幅およびチャンネル数を減らせるなどの利点がある.方法・結果: 本稿では,LMと新しい仮想音源の応用による高分解能イメージングと,LMとASTAを用いた変位ベクトルおよび横方向変位計測について,方法とシミュレーション結果,ならびに,ファントム実験の結果を報告し,それらの有効性を報告する.まず,LMとASTAに関して適切なフォーカシングとアポダイゼーションによる高周波化と広帯域化について述べ,次に,変位ベクトル計測法に関して多次元クロススペクトル位相勾配法や多次元自己相関法,多次元ドプラ法,スペクトル周波数分割法,各方向の周波数を調節できる座標回転法,いわゆる1方向変位計測法の使用を可能とするDigital demodulationについて,最後に横方向変位計測について横軸を横方向変位の方向に合わせることを基礎として横方向周波数で位相変化を割る方法(横方向ドプラ法)とスペクトルのMirror setting法について報告する.特に,LMとASTAの両者において,組織変位方向と,ビーム(ステアリング)方向と,座標の回転角度をパラメータとして,変位ベクトルと横方向変位の計測精度を評価した結果を報告する.通常のドプラ法との比較も行う.その際には,ASTAの一つのバージョンとして,ビームステアリングを行わずにトランスデューサから正面方向にビームを生成した場合に座標回転を行い,帯域幅を減ずることなく高精度に計測できることも報告する.それと同時に,2次元アレイ型トランスデューサを使用した3次元計測イメージングも意識し,時間分解能の向上のためにいわゆる送信時の平面波の応用も行う.また,スペクトラム周波数分割法の応用として,インコヒーレント信号の重ね合わせによるスペックルの低減と,低周波成分を捨てて瞬時周波数を稼ぐ方法の有効性も報告する.
【考察・結論】
 いずれの方法も有効であり,エコーイメージングの高分解能化,変位ベクトルと横方向変位の計測の高精度化が実現される.また,歪テンソルやずり弾性率等の弾性計測も高精度化される.
【参考文献】
[1]C. Sumi, JJAP, vol. 47(5B), pp. 4137-4144, 2008.
[2]C. Sumi, Reports Med Imag, vol. 3, pp. 45-59, 2010.
[3]C. Sumi, Reports Med Imag, vol. 3, pp. 61-81, 2010.