Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画28 領域横断:画質向上の新技術と時間分解能向上の新技術

(S259)

多共振型圧電振動子を用いた多周波超音波イメージングによる画質改善

Improvement of image qualities by using multi-frequency ultrasonic imaging with multiple resonance piezoelectric transducer

秋山 いわき

Iwaki AKIYAMA

湘南工科大学工学部人間環境学科

Department of Human and Environmental Science, Shonan Institute of Technology

キーワード :

【目的】
Bモード画像におけるスペックルノイズを軽減し,画質向上を目指す.
【対象】
今回行った実験はすべて生体組織模擬ファントムを対象とした.
【方法】
新しく開発した多共振型圧電振動子は,厚みの異なる2つの1-3コンポジット材を接着して作成したもので,薄い圧電体の共振周波数は6MHz,厚い圧電体の共振周波数は2MHzとした.薄い6MHzの圧電体の両端に電極を設けて,インパルス電圧を加えると,理論的には1.5MHzの整数倍の周波数を共振ピークとする多共振の超音波パルスを送波することができる.実測したピーク周波数は整数倍からは高い方へシフトしているが,3.0MHz,4.9MHz,6.8MHzの3つにピークを観察できた.この振動子をメカニカルセクタスキャナー(アロカSSD1000)に組み込み,増幅したRF信号を外部へ取り出した.パソコン(HP-Workstation, Z600)のPCIバスに挿入したAD変換ボード(Gage, CS8329)でこの信号を14ビット100MS/sでコンピュータのメモリへ取り込んだ.デジタル化されたRF信号はフーリエ変換後ハニング窓によって3つの周波数帯域に分割して,それぞれの周波数帯域でBモード画像を計算した.3つの帯域は,前述の3つのピーク周波数を中心周波数とし,帯域幅を1.5MHzとした.計算された3つのBモード画像を対数圧縮後に加算すると,スペックルが抑圧された画像を得ることができる.試作した多周波イメージング装置によって得られた,腹部ファントム(京都科学)の画像を図に示す.図(a),(b),(c)はそれぞれ3,0MHz,4.9MHz,6.8MHzの画像であり,この3つの画像から得られたスペックル抑圧画像は(d)である.信号処理や画像処理でスペックルを抑圧すると,分解能が犠牲となるが,本手法では分解能の低下を抑えながらスペックルを抑圧できる.一方,スペックル抑圧による画質向上の効果は深部においてまだ不十分である.その理由は,組織減衰により高い周波数の画像のSNRが低下するためであるが,試作した振動子は焦点距離50mmの固定焦点(凹面形状)である.これは分解能の低下の原因となる.今後はこれらの点を改善することが課題である.
【結論】
多共振型圧電振動子を用いた多周波超音波イメージング装置を試作して,腹部ファントムの映像化を行い,スペックル抑圧効果と画質改善を確認した.