Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画27 消化器:胆膵超音波診断の最前線

(S255)

胆膵疾患における造影ハーモニック超音波内視鏡の有用性

The clinical utility of contrast enhanced EUS with Sonazoid in the diagnosis of Pancreato-biliary disease

菅野 敦

Atsushi KANNO

東北大学病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Tohoku University Hospital

キーワード :

【背景】
造影超音波検査はreal timeに血流動態を観察できるmodalityである.しかし,胆膵疾患は病変が小さい場合が多く,また消化管に囲まれているため描出が難しい.造影超音波内視鏡(contrast enhanced EUS :以下CE-EUS)は,これらの弱点を補うことが可能であることから,胆膵疾患への応用が期待されている.
【目的】
胆膵疾患におけるCE-EUSの可能性を検討すること.
【対象】
2010年4月から2010年12月までCE-EUSを施行した胆膵疾患60例(膵癌18例,胆管癌10例,内分泌腫瘍8例,自己免疫性膵炎(以下AIP)7例(10回),IPMN5例,その他)
【方法】
超音波内視鏡はオリンパス社製GF-UE260AL5,観測装置はALOKA社製Prosoundα10を使用し,ExPHDモードを用いた.ソナゾイド®は0.015ml/kgを静注し,造影時のMI値は0.3とした.造影時の画像は超音波装置内のハードディスクに保存し,後に付属の解析ソフトにてTime Intensity Curve(TIC)を作成した.腫瘤部内にROIを設定し,造影が開始される時の輝度値を0とし,そこから造影された最大の輝度レベルを(1)ピーク値,2分後の輝度レベルを2分値と定義する.ピーク値まで上昇する速度を(2)ピーク速度,ピーク値から2分値まで徐々に輝度値が消退する速度を(3)消退速度と定義し,疾患毎に検討した.検討項目は(a)各疾患におけるTIC作成の可否 (b)各疾患におけるTIC各因子の比較 とした.疾患毎の比較はMann Whitney U testで行った.
【結果】
(a)TIC作成は60例63回のCE-EUS中55回で可能であった.通常の超音波検査では腫瘤の描出が難しい中下部胆管癌や膵尾部の小病変もCE-EUSによる観察およびTIC作成が可能であった.TIC作成が不可能だった症例は,IPMNの粘液塊や慢性膵炎症例における膵管内sludgeなどCE-EUS施行前に充実性腫瘤と診断し血流を認めなかった症例で,血流がないことの証明が臨床上有用であった.
(b) 1.膵癌n=18 (1)75.7±42.6(2)6.5±5.5(3)0.3±0.6,2.胆管癌 n=10 (1) 128.2±24.0(2)17.6±8.9(3)0.6±0.1,3.内分泌腫瘍n=8(1)131.0±30.3(2)19.1±14.2(3)0.6±0.3,4.AIP n=7 (1)112.9±51.0(2)13.3±7.9(3)0.6±0.3であった.膵癌と内分泌腫瘍を比較すると(1)p<0.01 (2)p=0.02(3)p=0.25とピーク値,ピーク速度で有意差を認めた.また,膵癌とAIPを比較すると(1)p=0.06(2)p=0.06(3)p=0.13といずれの因子でも有意差を認めなかったが,ピーク値とピーク速度で差のある傾向を認めた.以上から,CE-EUSのTIC作成による定量的解析は,膵癌,内分泌腫瘍,AIPなどの疾患の鑑別において有用である可能性が示された.
【結語】
近年,perfusion CTなどの時間軸に沿って血流評価を行う画像診断が注目されているが,造影超音波検査はX線被爆がなく簡便に行うことが出来るため,その有用性が注目されている.CE-EUSは,優れた空間分解能を有する超音波内視鏡と超音波造影剤を組み合わせることにより,胆膵疾患の血流動態の描出を可能にした.特に,中下部胆管や膵小病変の描出はEUS以外に出来ず,その有用性が示された.しかし,輝度値の普遍性や術者による描出能の差など問題点は多く,今後の検討が必要である.