鎌田 研

Ken KAMATA

近畿大学医学部附属病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【背景】
EUSは他の画像診断法と比べ高分解能をするため，胆膵領域の精査に用いられ普及しつつある．また，低音圧で二次性高調波を発生する超音波造影剤Sonazoidおよび広帯域EUSを用いることにより，EUSにおいて造影による実質染影が得られるようになった．
【目的】
今回我々は，胆嚢病変の診断におけるSonazoidを用いた造影ハーモニックEUS （CH-EUS） の有用性を検討した．
【方法】
2007年3月より2010年2月までに胆嚢病変が疑われた98例 （男 : 女＝47 : 51，平均年齢63歳） を対象にCH-EUSを施行した．その内訳は，胆嚢癌18例，胆嚢ポリープ38例，胆嚢腺筋腫症 （ADM） 14例，胆嚢結石19例，sludge 9例，であった．通常のEUS （FB-EUS） による観察後，造影ハーモニックモードに変更し，Sonazoid15μ/kgをbolus投与10-15秒後 （vessel image） と40-60秒後 （perfusion image） の腫瘍内血流を観察した．超音波内視鏡はオリンパス社製GF-UE260P，EUSシステムはOLYMPUS-ALOKA社製Prosound SSD α-10を使用した．FB-EUSで胆嚢病変を，それぞれCH-EUSによる造影パターンにより分類し，その診断能をFB-EUS，MDCTと比較検討した．vessel imageでは，病変内に流入する異常血管（irregular vessel）の有無に注目し，perfusion imageでは，造影剤による病変全体の染影パターンを観察した．
【結果】
胆嚢病変は，CH-EUSにより1型 （血流の認めないもの），2型（vessel imageでspotty vesselを認め，perfusion imageでhomogeneousなもの），3型 （vessel imageでspotty vesselを認め，perfusion imageでhetelogeneousなもの），4型 （vessel imageでirregular vesselを認め，perfusion imageでhetelogeneousなもの）の4つのパターンに分類された．1型の100%がsludgeまたは胆嚢結石であり，2型の98%が胆嚢ポリープであった．3型の100%がADMであり，造影することでRA-sinusが造影剤のdefectとして明瞭に観察され，結果としてperfusion imageではhetelogenousな造影パターンを呈した．4型の100%が胆嚢癌であり，vessel imageでirregular vesselを認めることが特徴的であった．FB-EUSにて胆嚢隆起性病変が疑われた症例のうち，4例は造影されないことによりsludge等の非腫瘍部であることが判明した．1型を胆石もしくはsludgeとした場合の感度，特異度，正診率はそれぞれ93%，100%，98%であり，4型を胆嚢癌とした場合の感度，特異度，正診率は86%，93%，92%であった．胆嚢病変におけるMDCT，FB-EUS，CH-EUSの正診率はそれぞれ74%，89%，93%であった．
【結語】
CH-EUSは，血行動態評価により病変の内部構造を明瞭に描出することが可能であり，胆嚢病変の鑑別診断に有用な検査になりうると考えられた．