Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画26 領域横断:携帯超音波と向き合う!

(S250)

携帯超音波と向き合う:腹部領域での活用

Face to “Pocket-sized US” :our experience in abdominal field

石田 秀明1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 八木澤 仁1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 小笠原 正文4

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Youko OHYAMA3, Masafumi OGASAWARA4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4GE横河メディカルシステム株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Ultrasound System Group, GE-Healthcare

キーワード :

【はじめに】
超音波診断装置を小型化することがもたらす利点は計り知れない.“小型”という定義自体かなり曖昧なものであるが,ここでは便宜上,ポケットに収納可能程度の小型のものを“携帯超音波”と定義し話を進めます.なお,その定義に該当するのは,現時点で,ほぼGE Health Care社のV Scan(135mm(縦),73mm(横),25mm(厚))390g)に限定されるため,ここでもV Scanを念頭に,携帯超音波が腹部領域の診療にもたらす福音について述べます.
【装置について】
携帯超音波は,ハイエンド装置と異なる幾つかの制限があります.それは,小型化,軽量化,を実現するため,a)ハード面での簡素化:1)プローブは1本で固定式.2)操作パネル(ボタン)も簡素化.b) ソフト面での簡素化:1)最小限の機能,などであり,そのため,ハイエンド装置(一般)に比して,携帯超音波(V scanに限っても)は,1)腹部検査の標準であるコンベックスプローブが使用できない,2)カラードプラ観察可能範囲が狭い,3)出力が低い(Bモード,カラー,ともに.M.I.:0.8),4)造影超音波や3D機能などは無い,などマイナス面もある.この事は,今後多くの携帯型超音波装置が市販されると予想されるが,常に多くの制限下に検査に当たることになることは必須で,使用装置の特性を十分理解の上使用することが求められる.
【腹部検査における位置づけ】
ハイエンド装置で詳細な検査が可能な状況にある場合,そこに携帯超音波を持ち込む理由は無い.この事は,逆に,それが出来ない状況に携帯超音波が活用される余地があると思われる.具体的には,1)超音波装置を設置するスペースが無い状況(狭い病室,狭い外来),2)異動先での超音波検査(往診,在宅医療,ドクターヘリ,など)等の状況があり,各論的には下記のものが挙げられる.
【具体的な活用場面】
1)外来診療の一環として利用:外来患者の診察に組み込む事で(腹部の聴診器的な感覚),次の検査の組み方,緊急度(検査順の優先度)が堅固になる.特に初診例の診療に有用で,(適切な)受診科(婦人科,泌尿器科,など)のふるい分けが効率よく可能となる.2)病棟回診の際の腹部チェックツールとして利用:患者さんの経過観察は要所々はハイエンド装置で詳細にチェックする必要があるが,その狭間は患者さんのベッドサイドで携帯超音波でチェックして“情報の穴”が生じないようにする事が“無言の変化”を見逃さない方法と思われる.3)往診先での腹部チェックのツールとしての利用:これまでは,重いブック型超音波を持ち運ぶか,単に触診などですましていたが,これからは,手の中に“画像診断装置”を常備できるため,次の手を打つタイミングが早くなると期待される.
【まとめ】
携帯超音波が普及した場合,消化器医(場合によって内科医全般)は携帯超音波を状況に応じて使える事が将来求められる事は十分想定し得る.これは医師各自の努力以外に学会が具体的な指導方法をくむ必要があると思われる.なお携帯超音波の走査法などの具体的な扱いについては,学会併設の教育セミナーや一般演題で述べる予定です.