Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画26 領域横断:携帯超音波と向き合う!

(S249)

携帯型心エコー装置の臨床的役割と将来的展望

Clinical usefulness and future perspective of portable ultrasound in cardiovascular disease

松村 誠

Makoto MATSUMURA

埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

Department of Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

心エコー検査は循環器疾患の診断,治療に必要不可欠であり,高度専門医療機関や大学病院だけではなく,地域医療を担っている第一線の診療所や病院でも日常的に行われている.そしてその実施件数は年々増加傾向にある.コンピュータ技術の進歩により小型で高性能な装置(携帯できる装置を含む)が開発され,様々な場所で多目的に利用することが容易になったことも一因である.最近ではポケットに収納出来る機種も登場し,これまで,あまり実施されなかった在宅の患者さんなどにも容易に心エコー検査を行うことが出来るようになった.在宅医療においては患者の管理向上に対する本法の果たす役割なども注目されている.一方,基幹病院や大学病院などではこのポケット型を使い入院患者を中心に様々な処置,治療前後の簡易検査として利用する機会が増加している.一般に携帯型心エコー装置の種類は多く,搭載されている機能や装置の大きさなどに違いが認められる.循環器用の携帯型心エコー装置(標準携帯型)にはドプラ機能が搭載され,心臓の形態診断や壁運動の評価だけでなく,血流異常の診断や血行動態の把握も可能である.しかし,連続波ドプラ法が利用できない機種も多く,圧較差などの推定には一定の限界を有する.一方,連続波ドプラ法に加えて組織ドプラ法やストレイン,経食道心エコー検査に対応できる機種(高性能携帯型)は固定型の高性能超音波診断装置と同等の役割を果たしている.大きさや重量に関しては,小さいのは前記のポケットサイズ,大きいのは20年前のノートパソコンぐらいである.高性能携帯型の多くは大きくて重いため,実際には携帯ではなく,台車に固定して利用するタイプである.また,操作性,画質,ドプラ感度などの性能面でも違いが認められる.実際に使用すると診断距離の深い部位における断層像の画質,乱流成分の表示法や連続波ドプラ法の感度に差が認められる.図は僧帽弁逆流のカラードプラ像である.Aは高機能携帯型,Bは標準携帯型の画像である.Aに較べてBの乱流成分(モザイク領域)は少なく,重症度判定に際して注意が必要である.また,固定型や高機能携帯型に比較して標準携帯型では連続波ドプラ法による逆流速度は低い傾向にある.今後,携帯型心エコーを臨床の様々な場面で活用するには各装置の性能を検証し,固定型装置との違いを十分に理解した上で利用することが重要である.