Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画25 領域横断:3Dエコーでなければできないこと

(S247)

産婦人科領域における3次元超音波

Three-dimensional Ultrasound in Obstetrics and Gynecology

馬場 一憲

Kazunori BABA

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター

Center for Maternal, Fetal and Neonatal Medicine, Saitama Medical Center, Saitama Medical University

キーワード :

 3次元超音波は様々な領域で利用されている1)が,産婦人科においては,普通のクリニックも含め広く利用されている.最大の理由は,何が映っているのか医療人にしか分かりにくい断層像と異なり,一般の人でも分かりやすい3次元像(図1)によって胎児をリアルに表示することができ,それが妊婦や家族に支持されたためと考えられる.2005年に発足し,年1回の学術集会を開催している3次元超音波研究会での発表の多くも産科領域に関係している.
 3次元超音波でなければできないこととしては,次の点があげられる.(1) 3次元像の表示(動画を含む),(2) 任意断面の表示,(3) 3次元空間での自由な計測(体積計測を含む),(4) 血流(血管)の3次元構造の表示,(5) 3次元空間の情報の保存・コピー・伝送,(6) 被検者無しでの再検査(遠隔診断を含む).
【産科領域】
 胎児体表の3次元像では,染色体異常児に見られることが多い耳介低位や手指の重なりなど,断層像では診断が難しい顔や四肢の異常の診断が容易となる.また,管腔構造をした体内の病変も3次元像として明瞭に描出できる.検査時の胎児の位置や向きが不適当なため,断層法では計測や診断のための適切な断面を得ることが困難な症例でも,任意断面構築によって最適な断面を表示することができる.
 産科施設での超音波診断装置の普及率は,ほぼ100%であるが,詳細な胎児診断ができる検査者は少ない.エキスパートに超音波断層法の写真やビデオを送っても,肝心の断面が写されていなければ正しい診断は困難である.しかし,3次元超音波で得られる3次元データセット1)には3次元空間のすべての情報が含まれているため,3次元データセットさえあれば必要な断面を後から再構築でき,被験者無しでの再検査が可能になる.
【婦人科領域】
 経腟的な断層法では,子宮の先天性形態異常や子宮内異物の診断に有益な子宮前額断面を表示することは困難である.しかし,3次元超音波を用いると,容易に描出できる.
 3次元超音波では,腫瘍や嚢腫などの体積を正確に計測して変化を調べたり,3次元的な構造や血流(血管)の3次元構造から病変や腫瘍の発生部位などを調べたりすることが容易になる.
【参考文献】
1)竹内久彌,馬場一憲(編):マスター3次元超音波-産婦人科・心臓・消化器・泌尿器・乳腺-,メジカルビュー社,2001