Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画25 領域横断:3Dエコーでなければできないこと

(S247)

3Dエコーでなければできないこと -乳腺について-

3D echo for breast

白井 秀明

Hideaki SHIRAI

札幌ことに乳腺クリニック検査部

Laboratory, Sapporo Kotoni Breast Clinic

キーワード :

乳腺超音波検査において,これまで病変などを判定する場合,検者がリアルタイムに探触子を走査し,そこで得られた多くの画像所見を頭の中で再構築し,図示や文章を用いて情報や判定を報告してきた.しかし,その内容はあくまで検者の空間認識力に依存するところが大きく,そのため主観的な検査であるといわれる.また所見の表現方法等も様々であることより,報告を受けた側の捉え方に差が生じてしまう懸念は否定できない.このように客観性に乏しい検査ではあるものの,そこから得られる情報量は非常に多く重要な検査法であると考える.精密検査の場合でも同様に,MRIと共に乳癌の広がり診断やエコーガイド下穿刺吸引細胞診,マンモトームなどは欠かせない検査である.しかし,このように検査を担当する検者のスキルが結果に大きな影響を及ぼしてしまうことより,未だ乳癌診療においても一般的に行なわれている検査ではないのが現状である.その理由として,腫瘤の形態を認識する場合には,まず腫瘤の最大断面を探し,それを基準に直行する断面の画像と対比して行われていることが多く,その報告においても多くはこの2断面の記録が用いられる.但し,普通この2方向だけで腫瘤の立体的な特徴をすべて網羅することは難しい.また,病変は多彩な形態を示すが,その画像所見を表現する用語はさほど多くないことより,その形態を正確に伝えることや,評価することはそう容易ではない.ここに客観的ではないと思わせる理由があるものと考える.本来このような場合に一番良いと考えられる方法は,腫瘤だけを乳房から取り出して,それを直接見ることができれば話は早い訳だが,通常は不可能である.この目的に少しでも近づくための手段として期待されているのが3Dプローブを用いた3D画像であろう.3D表示は通常1画面の中にBモード断面とそれに直行する断面,その腫瘤を上から見た画像,これが一般的にCモード画像と呼ばれるもので,3D再構築像はそのCモードに厚みを持たせ,病変をより際立たせることで,周囲組織との関連を理解しやすいように表示させたものである.これを利用して,これまでのBモードのみでは描出が困難であった断面,つまり乳房を正面方向から見た画像によって病変の広がりを把握することが可能となった.これによりCモード画像は従来病変部の拡がりを決定してきたMMGやMRI画像と比較しても,手術の体位に近く,特別な施設を必要としないため,どの様な場面でも用いることが出来,手術体制の正確な位置の決定が可能であることより,乳房温存術の可否や手術範囲の決定にもその有用性は高いものと考える.当院では今年2月からアロカ社製prosoundF75にて3Dプローブを用いた検査を主に手術前検査や術前化学療法による腫瘍縮小効果判定に用いている.またこれまでの課題であった超音波の客観性に対する今後の期待や,実際乳腺用超音波3Dプローブを用いて腫瘤の特徴の把握についての臨床応用例をいくつか供覧し,当日はその有用性について報告する予定である.