Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画25 領域横断:3Dエコーでなければできないこと

(S246)

3D心エコーで何ができるか.

Clinical Implications of 3D Echocardiography

岩倉 克臣

Katsuomi IWAKURA

桜橋渡辺病院循環器内科

Division of Cardiology, Sakurabashi Watanabe Hospital

キーワード :

 心臓は本来3次元の構造物である.2Dエコーは立体構造物である心臓を特定の断面から観察する.そのため心臓内の構造を十分に観察できるとは限らず,定量的な計測においても限界が生じる.3Dエコーは心臓を3次元的に表現するとともに,任意の断面からの観察を可能にする.それにより2Dエコーでは見えない構造をみることが出来,またより正確な計測を可能にする.本シンポジウムではこのような観点から3Dエコーの有用性を概観する.
【1】3Dエコーでしか見えない心臓の構造.
 3Dエコーでは2Dエコーでは出来ない視点から観察することが出来る.臨床的に最も有用な応用は3D経食道エコー(TEE)を用いた僧帽弁の観察である.僧帽弁に対する手術の主流が形成術である今日,術前に僧帽弁の構造を正確に知ることがより重要である.3D-TEEを用いることにより僧帽弁の変性を術中と同じ心房側(Surgeon’s view)から観察することが可能である.3D-TEEの実施が時に制限される,小児先天性心疾患においては経胸壁3Dエコー(3D-TTE)が重要な役割を担っている.ただ成人症例においては3D-TTEによる構造観察の有用性は未だ定まっているとは言えない.画質の良好な例では僧帽弁の構造も3D-TEE同様の像を描出することは可能である.ただ3D-TTEの場合はfull volume画像からマニュアルで観察断面を切り出す必要があり,その複雑な手順が3D-TTEの普及の障碍となっていた.最新のシステムでは左室full volume像から必要な断面が自動的に切り出される.この機能は3D-TTEによる検査を容易にするにとどまらず,日常のエコー検査のワークフローを大幅に革新する可能性を秘めている.3Dエコーでは今までにない視点で心臓を観察出来る.我々は心筋梗塞における心内膜下領域の灌流や心内膜構造の経時的な変化を心腔側から観察することに取り組んできた.このような像は3D-TTEでしか得られない.
【2】3Dエコーによる定量的解析
 2Dエコーにおける左室容積などの指標はいくつかの断面から求めた推測値にすぎず,心臓の構造についての幾何学的な条件が満たされていることを前提としている.前提条件は常になりたつとは限らず,誤差の原因となる.3Dエコーでは2Dエコーよりも高い精度で左室,左房などの容積を計測することが可能である.特に非対照的な構造の右室の容量については3D-TTEの独壇場である.容積以外でも2Dエコーでの計測は解剖学的に正しい設定断面を前提とするが,これが満たされないと誤差が生じる.3D-TTEでは解剖学的に正しい断面を確実に設定し正確な計測を行うことが可能である.例えば3D-TTEから求めた僧帽弁閉鎖不全(MR)における逆流ジェットの最小断面積はMRの逆流の程度を正確に評価しうるものであった.前述の断面の自動設定機能を用いることでさらなる計測精度の向上が期待される.局所収縮性の評価法としてのストレイン解析も3Dエコーへの応用がなされている.2Dストレインでのthrough-plane現象などの欠点を克服するとともに,3Dエコーでは面の変化を追跡することでエリアストレインも計算でき,3次元的な収縮能の新しい指標として注目されている.