Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画24 産婦人科:早産に関する超音波診断の進歩

(S243)

経腟プローブによる子宮頚管硬度の相対的評価と切迫早産予測への応用可能性

Definition of uterine cervical consistency using Elastography technique: A basis for clinical use of the method for prognosis of premature birth

成瀬 勝彦1, 佐道 俊幸1, 重富 洋志1, 大野木 輝1, 吉澤 順子1, 吉田 昭三1, 平井 都始子2, 小林 浩1

Katsuhiko NARUSE1, Toshiyuki SADO1, Hiroshi SHIGETOMI1, Akira ONOGI1, Yoriko YOSHIZAWA1, Shozo YOSHIDA1, Toshiko HIRAI2, Hiroshi KOBAYASHI1

1奈良県立医科大学産婦人科学教室, 2奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

1Department of Obstetrics & Gynecology, Nara Medical University, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
生体の組織硬度を描出する超音波技術であるエラストグラフィーはすでにいくつかの疾患に対し有用な診断技術となっている.産科領域では切迫早産の予測・診断や分娩開始時期予測への応用が期待されるが,現在のところ実用化されておらず,また正常所見の蓄積も乏しい.我々は正常・異常妊婦の子宮頚管を対象に本法を用いた検討を行い,部位別の硬度の比較と臨床背景との関連を解析した.
【方法】
当院にて妊婦健診を受診し,同意を得た妊婦86名(うち妊娠16週まで:18例,17週〜35週:41例,36週以降:26例)を対象とした.日立EUB-7500と経腟e-probeによるElastography(Elasto)にて子宮頸管を描出し,領域内の相対的組織硬度をカラー記録した.得られたJPEG画像もしくは動画(バルン圧迫法を用いた場合)について,内・外子宮口,頸管腺周囲,組織中央の各領域に分け5段階のスコアリングを盲検下に行い,妊娠時期別の硬度スコアとパターンを評価した.その前後の妊娠・分娩経過を診療録や分娩記録を元に照合し,部位間の硬度比較,また切迫早産の有無などによるパターンの違いについて,ノンパラメトリック検定による統計学的解析を行った.なお切迫早産については,子宮収縮抑制剤の内服を行ったもの,もしくは子宮頸管の短縮を認めたものと定義した.
【結果】
Elastoにて,子宮頸管内側の頸管腺周囲はどの週数でもそれ以外の部位に比べて軟であった(p<0.01)が,妊娠36週以降で子宮口開大の始まっている症例に限定すればこの硬度差は有意でなかった.内・外子宮口の相対的比較では,その後に切迫早産を発症しなかった症例の妊娠16週以前は内子宮口が外子宮口に比し有意に硬かった(p=0.026)が,後に切迫早産を発症した例ではこの硬度差が有意ではなかった.また本法は測定領域内の相対的評価であり絶対値を正確に比較できるものではないが,妊娠16週以前の頸管組織中央部の硬度スコアも,後に切迫早産を発症した例において,しなかった例に比し有意に軟らかい値を示した(p=0.034).妊娠36週以降では外子宮口が内子宮口に比し有意に軟らかかった(p=0.041).双胎か否か,分娩までに要した日数,経腟分娩の可否,メトロイリンテルによる機械的頸管開大を要したか否かについては,有意な差を認めなかった.
【結論】
妊婦健診において近年一般的に行われ,頸管長の測定から切迫早産診断のための有力なツールとなった経腟超音波診断と同時に,Elastoは容易で短時間に行える追加検査として期待できる.我々の検討からは特に妊娠の初期において,簡便に内・外子宮口の硬度差や子宮頸管実質の硬度傾向を視認し切迫早産の予知に応用できる可能性が示唆された.圧迫の変化による描出誤差の問題はバルンの使用で解決できたが,子宮の位置によっては頸管の描出が困難な場合もあり,感度・特異度の設定も目指してより症例を蓄積し評価する必要がある.