Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画24 産婦人科:早産に関する超音波診断の進歩

(S242)

子宮頸管長短縮過程から切迫早産,早産がどこまで予知できるか?

To what extent can the process of the cervical length shortening predict preterm labor and delivery?

吉里 俊幸1, 小濱 大嗣2, 大竹 良子2, 野尻 剛志2, 永川 健太郎2, 宮本 新吾2

Toshiyuki YOSHIZATO1, Hirotsugu OBAMA2, Yoshiko OTAKE2, Takeshi NOJIRI2, Kentaro NAGAKAWA2, Shingo MIYAMOTO2

1福岡大学病院総合周産期母子医療センター, 2福岡大学病院産婦人科

1Center for Maternal, Fetal and Neonatal Medicine, Fukuoka University Hospital, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Fukuoka University Hospital

キーワード :

【目的】
子宮頸管長(CL)短縮過程と切迫早産,早産との関連の解析から,切迫早産,早産がどこまで予知できるかを明らかにすることを目的とした.
1. CL短縮過程と早産,切迫早産との関連
【対象と方法】
経時的にCLを計測した母体,胎児合併症のない単胎114例を対象とし,妊娠26週以前,27-31週にCL≦25mmとなった症例を早期短縮群(20例),後期短縮群(19例),それ以外を対照群(75例)に分け,臨床的背景の違いを検討した.
【結果】
(1)早期短縮群は全例で縫縮術and/or tocolysis,後期短縮群は10例(52.6%)にtocolysisを施行した.(2)早期,後期短縮群は各1例が早産となった.
妊娠30週以前でCL≦25mmで,頸管縫縮術未施行,母体,胎児合併症のない単胎症例につき,後方視的に以下の検討を行った.統計学的解析はMann-WhitneyあるいはWilcoxon検定を用い,P<0.05を有意とした.
2. CL短縮過程とtocolysisとの関連
【対象と方法】
16-20週から観察したCL短縮症例64例(初産婦:26例,経産婦:38例)を対象とした.tocolysis群(21例)と未施行群(43例)に分け,以下の項目について比較した.1)CL≦25mm,CL≦15mm時の妊娠週数,2)CL≦25mmから≦15mmまでの期間,3)妊娠36週未満の早産の有無.tocolysis群では,tocolysis開始時のCLを検討した.
【結果】
(1)CL≦25mm/≦15mmの妊娠週数は,tocolysis群(25.5±0.62(Mean±SEM)mm/29.1±0.50mm)では未施行群(27.0±0.42mm/34.0±0.41mm)より早かった.(2)CL≦25mmから≦15mmの期間は,tocolysis群(3.6±0.8週)では,未施行群(7.0±0.5週)より短く,急速なCLの短縮を認めた.(3)妊娠36週未満の早産は,tocolysis群は3例(14.2%:3/21),未施行群は1例(2.3%:1/43)であった.(4)tocolysis開始時のCLは12.5±1.0mmであった.
3.妊娠中期以降の自然流早産歴を有する経産婦のCL短縮過程の特徴
【対象と方法】
妊娠16-20週から観察しCL短縮を認めた経産婦55例を対象とした.妊娠14-35週の自然流早産歴(+)群16例と(-)群39例に分け,1)CL短縮開始時期(CL≦25mmの妊娠週数),2)短縮速度(CL≦25mmからCL≦15mmに至る期間(週))について両群間で比較した.
【結果】
CL短縮開始時期は流早産歴(+)(26.1±0.7週)は(-)群(24.8±0.6週)との間で有意差はなかったものの,短縮速度は,自然流早産歴(+)群(2.3±0.5週)は(-)群(5.3±0.9週)より急速であった.
4.子宮収縮剤投与中のCLの変化と早産予防効果
【対象と方法】
CL短縮を認めritodrineによる切迫早産治療を行った43例を対象とし,ritodrine投与中に陣痛発来した無効群(15例),ritodrine投与終了3日以内に陣痛発来した早期陣痛発来群(13例),陣痛発来しなかった未発来群(15例)の3群に分け,投与前後のCLを3群間で比較した.
【結果】
(1)投与前のCLは3群間で有意差はなかった.(2)無効群,早期発来群では,投与終了時のCLは投与前より短縮した.
【結論】
26週以前にCL短縮を認めるand/or CL短縮が急速に進む症例では,CLが13mm前後を境として子宮収縮が増強しtocolysisが要すること,2)中期以降の自然流早産歴のある経産婦では,CLが急速に短縮する傾向にあること,3)tocolysisを要する症例の中で,子宮収縮が抑制されているにも関わらず,進行性にCL短縮が認められる場合は,早産あるいはtocolysis中止後の早期陣痛発来に至ることが分かった.