Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画22 循環器:大動脈弁疾患の評価と手術適応を考える

(S234)

本邦における経中隔的大動脈弁形成術の位置づけ-当院における初期成績の検討-

Percutaneous transcatheter aortic valvuloplasty in Japan -a short term review-

棗田 誠, 廣上 貢, 村上 弘則

Makoto NATSUMEDA, Mitsugu HIROKAMI, Hironori MURAKAMI

手稲渓仁会病院循環器内科

Cardiology, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【背景】
硬化性大動脈弁狭窄症(scAS)が高齢化に伴い増加している.合併症を多く持つ高齢者では大動脈弁置換術(AVR)が施行できない場合が稀ではない.最近AVR不適応の重症scASに対し,従来の大動脈側からの経皮的大動脈弁形成術(PTAV)と比較し,脳梗塞などの合併症が少ない,経中隔的大動脈弁形成術(antePTAV)が施行可能となった.
【目的】
当科におけるantePTAVの初期成績を調査し,同法の臨床的位置づけを検討する.
【方法】
2010年2月より2010年10月までに当科で施行したantePTAV9例について,初期成功,大動脈弁口面積(AVA),大動脈弁圧較差(AVPG),臨床的所見を術前後で比較した.
【結果】
antePTAVの初期成功率は100%であった.治療前AVA0.6±0.1cm2に対し治療後0.9±0.2cm2(P=0.003), 治療前AVPG111±29mmHgに対し治療後70±18mmHg(P=0.0005)と改善を認めた.AVA,AVPGはantePTAV施行1ヶ月後に最も改善した.追跡した全例で6ヶ月後にはAVA,AVPG値は前値に復していたが,症状はantePTAV直後から改善し,6ヶ月後でも施行前より軽かった.心室のnegative remodelingによる心室壁厚が低減した症例,左室駆出率が30から55%まで回復した症例があり,心不全再発例はわずか1例であった.非心臓手術がscASのため禁忌とされた症例ではantePTAV後,手術が可能となった.手技に伴う重大な合併症はブロッケンブロー法に伴う,心タンポナーデが2例,完全房室ブロック2例(1例はPMI適応)であった.心タンポナーデは心嚢穿刺・排液で軽快した.死亡例,脳梗塞の合併はなかった.
【考察】
従来のretrograde PTAVと比較し,antePTAVは脳梗塞の合併が少なく,高齢,低左心機能などの高リスク患者,また,造影剤を殆ど使用しないため腎不全患者に対しても比較的安全に施行でき,再増悪後も繰り返し行える利点がある.手技的なlearning curveがあり,長期的効果は望めない欠点はあるが,AVR,あるいは経皮的大動脈弁置換術の禁忌症例に対する,補完的治療として有用性が高い.加えて,心不全の一時的回避,低左心機能患者での左心機能改善によるAVRへのつなぎ,非心臓手術禁忌の解除など幅広い用途があると考えられる.