Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画21 循環器:心臓再同期療法における心エコーの役割

(S230)

電気生理およびデバイス治療専門医から見たCRTにおける心エコーの役割

Role of Echocardiographic evaluation for CRT candidates : Comments from the Electrophysiologist and Device-operator

吉田 幸彦, 立松 康, 七里 守, 平山 治雄

Yukihiko YOSHIDA, Yasushi TATEMATSU, Mamoru NANASATO, Haruo HIRAYAMA

名古屋第二赤十字病院循環器センター 内科

Cardiovascular Center, Nagoya Dai-ni Red Cross Hospital

キーワード :

CRTは心室内伝導障害を合併するうっ血性心不全患者の生命予後,QOL,左室リモデリングを改善する.CRTにおける最も重要な問題の一つとしてnon-responderの問題があり,心電図のQRS巾で適応を決定した場合約30%でnon-responderが生じる事が知られている.最初は自覚症状が改善しない症例をnon-responderと定義されていたが,現在は左室volumeの縮小が得られない症例とされている.QRS巾が150ms以上の症例でも心エコー上の左室内収縮同期不全が無い症例が約30%存在する事から,当初は左室内収縮同期不全が無い症例に対してCRTを施行することがnon-responderを生じる最大の原因と考えられた.そこでエコーによって術前に左室内収縮同期不全を正確に評価すればnon-responderの頻度が減ると考えられ,様々なエコー指標による左室内収縮同期不全の評価が試みられるようになった.しかしながらPROSPECT試験で示されたように単一のエコー指標ではvolume responderを選別できないとされている.しかしながらこれはある意味当然の結果と考えられる.なぜなら左室内収縮同期不全の存在はCRT植え込みの単なる必要条件であって,左室が縮小する(volume responderとなる)ためにはさらに心筋viabilityが保たれている事や最遅延収縮部位に左室リードが留置される事などが必要になる.したがってエコーによる左室内収縮同期不全の評価(特に局所心筋収縮の時間差の評価)は,本来はCRTの適応(自覚症状の改善が得られるか否か)を決定するために使用されるべきであり,臨床上最も重要な評価項目と考えられる.一方でvolume responderでは植え込み後の心不全入院や不整脈イベントが少ないことが知られている.Volume responderとなるためには特に残存心機能(心筋viability)が重要と考えられるため,volume responderの予測には心筋viabilityとdyssynchronyの両者を評価する指標が必要と考えられる.これらの新しい指標は患者予後の予測やCRT-PとCRT-Dの使い分けの決定などに使用されるべきであろう.