Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画20 産婦人科:胎児心エコー −次の十年に向けて−

(S226)

超音波検査技師による,胎児心臓スクリーニングと課題

The effectiveness and problems in ultrasonographic screening of congenital heart disease by sonographer

芳野 奈美, 大川 朋子, 吉田 英美, 内田 純子, 田坂 知子, 磯部 美苗, 井上 アキ, 竹村 秀雄

Nami YOSHINO, Tomoko OKAWA, Emi YOSHIDA, Jyunko UCHIDA, Tomoko TASAKA, Minae ISOBE, Aki INOUE, Hideo TAKEMURA

小阪産病院医療技術部超音波室

Department of Ultrasound, Kosaka Womens Hospital

キーワード :

当院は毎年約2000件のローリスク分娩を取り扱う産科・婦人科専門の一次医療施設である.約30年前から当院受診の妊産婦すべてを対象にした胎児スクリーニングを超音波専任技師が担ってきた.
スクリーニングを行う時期や回数さらにその内容も次第に充実し,現在では日本超音波医学会認定の超音波検査士4名が妊娠初期から後期の間に4回の検査を行っている.特に胎児心臓のスクリーニングと,出生前にチェックすべき項目をリストアップした40項目のチェックリストの使用を開始した2001年1月からは,それまで低率であった先天性心疾患の検出率は確実に向上した.
2001年からの9年間に当院で胎児スクリーニングを施行した18556例を対象に心・大血管系形態異常の検出率について検討したところ形態異常総数は230例,有病率は1.24%であり,出生前の検出は86例,検出率は37.4%であった.特に重症先天性心疾患の検出率は80%であり,先天性心疾患による新生児緊急搬送率を胎児心臓スクリーニング実施前の4分の1に低下させることが出来た.精度の高いスクリーニング検査を行うことで,生命予後にかかわる重症心疾患を早期に発見し安全な時期に母体搬送することが可能になったのである.
専任技師による複数回の胎児スクリーニング検査とチェックリストの併用は胎児形態異常を検出するのに有用であると思われる.しかし現状では技師による胎児スクリーニング体制の確立している施設は全国的にもまだ多くはない.ハイリスク妊婦を適切に高次医療施設に母体搬送し,ローリスク妊婦の安全な出産を担う一次医療施設としての役割を果たすためには,心臓を含めた胎児スクリーニング検査は不可欠であり,産婦人科医の不足が深刻である現在,産婦人科領域の検査を高精度に実施できる技師の育成が必要であると思われる.
当院の超音波室は胎児心臓スクリーニングを2001年に開始したことで,先天性心疾患の検出率を向上しつつ10年間を歩んでこられた.これからの10年は,より多くの施設で多忙な産科医に代わって胎児心エコーを行える超音波技師の育成が課題であると思われる.