Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画20 産婦人科:胎児心エコー −次の十年に向けて−

(S226)

心疾患の胎児診断に向けて:基本的スクリーニングおよび高度スクリーニング

Prenatal Detection of Heart Diseases: Basic and Advanced Screening Method

前野 泰樹

Yasuki MAENO

久留米大学医学部小児科

Department of Pediatrics, Kurume University School of Medicine

キーワード :

 超音波診断装置の性能が向上し普及してきたことにより,世界中で日常的に胎児期から心臓病が発見されるようになってきた.2011年現在,偶然発見された症例に対応するのみでは,社会的に許容されない時代へと入ってきている.国際的に認められているISUOGでは,胎児心エコースクリーニングに大血管の評価まで含められた.この時代に有って,今後10年で日本における心臓病の胎児エコースクリーニングの方向を定める事は重要な課題である.一方で,日本の産科医療の実状を踏まえたスクリーニング法を提示しなくては,その普及は望めない.そこで今回,この10年で全国漏れの無い普及を実現すべき,基本的スクリーニングと,目標とすべき高度スクリーニングの二つのレベルのスクリーニング法を定めることにより普及を促すことを提案する.
 基本的スクリーニング:簡便であり,かつ有効にスクリーニングを行う方法を定める事が普及には不可欠である.その方法としては,4 chamber viewと3 vessel viewにて,心臓と大血管の「位置」と「大きさ」のみをチェックすればよい.基本的なスクリーニングでは,詳細な心内構造の判断はしなくても十分可能である事を強調したい.スクリーニングすべき心疾患は,完全大血管転位症である.また大動脈弓離断症も発見できる.一般産科での通常の妊婦検診のときの全体の胎児エコー5分ほどのうち1-2分を使えば可能である.10秒胎児心エコースクリーニングも提案したい.
 高度スクリーニング:現在の高性能エコー機器を使用すれば,十分にトレーニングを受けた医師,超音波技師などであれば,より詳細な胎児心臓病スクリーニングが可能である.この方法を明確に提示する事は重要である.4 chamber viewのみをとっても,より詳細な心内構造の評価が可能であり,3 vessel trachea viewまで含めた評価を行う.スクリーニングすべき心疾患は,総肺静脈還流異常症を含めたすべての心疾患である.胎位が良ければ1-2分ほどでも可能であり,長くても5分もあれば十分全体を評価可能である.
 すべての胎児が高度スクリーニングを受ける事ができる新しい体制を実現する事が最終的な目標では有るが,この10年では,現在の産科医療体制の中でまず,基本的スクリーニングを日本全国に普及すべき目標として定めることが現実的ではないかと提案する.