Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画20 産婦人科:胎児心エコー −次の十年に向けて−

(S225)

胎児心エコー検査における産科医の役割と目指すべき場所

In the next 10 years, what to do obstetrics in fetal echocardiography

松岡 隆, 岡井 崇

Ryu MATSUOKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

従来,本邦の新生児死亡原因の多くを先天性形態異常が占めていた.中でも先天性心疾患には出生直後に状態が急速に悪化することがあるため,我々産婦人科医も出生前診断の必要性を感じていた.既に一部の施設では積極的に心臓を含めた超音波胎児スクリーニングを行っていたが,2006年に日本胎児心臓病学会から胎児心エコー検査ガイドライン(日本胎児心臓病研究会,日本小児循環器学会 班長 里見元義),ISUOGからCardiac screening examination of the fetusが発表され,また,学会や勉強会の教育広報活動により胎児心臓超音波検査は急速に広まった.その結果,ここ数年で先天性心疾患の出生前診断率は格段に向上したと言える.しかし,先天性心疾患にはハイリスク妊婦群が存在するものの,ローリスク妊婦群からも発生するため全妊婦を対象とした検査を行わない限り必ず取りこぼしが出てしまう.また,胎児心臓を超音波で観察すれば明らかに検出可能な先天性心疾患はスクリーニング検査の一般化により抽出することができるが,スクリーニングの結果偽陰性となりやすい症例にこそ出生後急変する症例(大血管転移症や肺静脈還流異常)が含まれるため,スクリーニング検査の流布には教育が必須となる.検査レベルは施設間により差があるのは否めないが,一次施設だからレベルが低いとは限らない.熱心な先生,検査技師は既に高いレベルのスクリーニングを施行しており,スクリーニングを行っていない施設との格差が広がっている.今後我々産科医の目指すところはスクリーニングの一般化に満足することなく検査レベルの向上だと考える.また,その次のステップでは,胎児診断されていても出生後の治療では予後不良となる症例に対して胎児治療(BASなどのカテーテル治療)を行い予後改善に寄与することであろう.