Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画19 泌尿器:泌尿器超音波は,CT,MRI,PET-CT と戦えるか?

(S223)

光超音波・多機能造影剤が開く未来

Future of optical-acoustic imaging and multifunctional contrast agents

中田 典生, 宮本 幸夫

Norio NAKATA, Yukio MIYAMOTO

東京慈恵会医科大学放射線医学講座

Department of Radiology, Jikei University, School of Medicine

キーワード :

現在の超音波画像の原理となっている物理現象である圧電効果は1880年にフランスのキュリー兄弟が発見した現象である.この翌年の1881年に光音響効果は米国のグラハム ベルによって発見された.光音響効果とは,光エネルギーを吸収した分子が熱を放出し,その熱による体積膨張により音響波(疎密波)を発生する現象のことである.この光音響効果を利用して体内を可視する装置が光超音波イメージングである.光光源に近赤外光を使い,特殊なセンサーで超音波を検出すると,造影剤などを使用しなくても血管像が見ええる.これを利用して腫瘍の新生血管を診ることで,がんの早期発見を試みる新しい画像診断法である.また造影剤をもちいた分子イメージングの分野でも光音響画像は重要である.さまざまな方法を高度に統合した小型の画像化プローブを作ることは,バイオナノテクノロジーにおける重要な課題であり,分子診断や分子イメージング,分子治療に大きな影響を与えるだろう.しかし,ナノメートルスケールで複数の構成要素を組み合わせて,個々の構成要素だけでは実現できない新しい画像化法を生み出すのは困難であることがわかっている.本論文では,明確な構造的特性(例えば,大きさ,シェルの厚さ,コアとシェルの間隔)と物理的特性(例えば,電子的特性,磁気的特性,光学特性,熱的特性,音響特性)を有する,酸化鉄と金が結合したコアシェル・ナノ粒子(NP)を示す.作製された多機能ナノ粒子によって,電子顕微鏡法や磁気共鳴画像化法,散乱を利用した画像化法のコントラストが得られるだけでなく,さらに重要なことに,新しい画像化法も可能になる.この新しい方法は動磁性光音響画像化法で,従来型のNP造影剤を用いた光音響画像と比べてコントラストが著しく増強される.これらの最先端の分子イメージングは,まだ基礎的研究段階ではあるが,21世紀に最も有望な画像診断法として,その進歩が期待されている.また分子イメージングでは,従来の単独モダリティの造影剤ではなく,マルチモダリティ用造影剤のコンセプトも提案されている.今回これら分子イメージングの重要性と,多機能(MRI+光音響画像)造影剤などの将来展望について述べることする.