Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画19 泌尿器:泌尿器超音波は,CT,MRI,PET-CT と戦えるか?

(S221)

前立腺造影超音波

Contrast-enhanced ultrasonography of the prostate

佐野 太, 上村 博司

Futoshi SANO, Hiroji UEMURA

横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学

Department of Urology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
早期前立腺癌は多くの場合無症状で,PSAが高値を示す場合や,直腸診で前立腺部に結節を触れる場合に,前立腺針生検を行い確定診断がなされる.早期に発見すれば,手術や外照射,密封小線源留置など根治的治療法を施すことで良好な予後が期待できるが,局所進行例や有転移症例では治療に難渋することが多い.ゆえに,軽度PSA上昇例で癌の有無を正確に診断することが重要である.
現在の前立腺生検の標準的な方法は,経直腸的超音波(transrectal ultrasound: TRUS)を用いた,系統的多箇所生検である.この方法は安価で,PSA値によって一定の癌陽性率が期待できる方法である.しかし,Bモード超音波画像では,前立腺内のどこに病巣があるのか不明であることが多いゆえ,不必要な生検,見落としなどの問題もあわせ持っている.この問題の解決のためには画像診断による標的生検の確立が必要である.
【対象と方法】
今回我々は,前立腺癌疑いで前立腺生検施行前の患者,ならびに前立腺癌に対する前立腺全摘施行前の患者に対して第二世代の超音波検査用造影剤を用いた経直腸的前立腺超音波検査を行い,前立腺癌の描出能について検討した.超音波検査用造影剤(ペルフルブタンマイクロバブル懸濁液)を経静脈投与し,超音波検査画像を撮像,記録した.生検予定患者においては癌の存在が疑われた部位につき,追加生検を行った.得られた超音波検査画像と病理検査結果を比較検討した.
【結果と考察】
前立腺癌を示唆する造影超音波所見は従来報告のあった①造影効果の強い部位 ②造影効果出現の早い部位だけでなく,③異常流入血管の認められる部位や, ④造影されない部位なども考慮すべきと考えられた.とくに造影されない部位の内部に異常血管を含む所見は癌を強く示唆するものと考えられた.
この判断基準を生検に応用したところ,造影超音波検査で癌の存在が疑われた部位は系統的生検部位よりも有意に癌の陽性率が高かった.特に,PSAが10ng/ml未満の症例でその傾向が顕著であった.
前立腺全摘標本で同定された癌病巣のうち,造影超音波検査で同定できたものは同定できなかったものに比べて有意に大きい傾向にあった.また,前立腺全摘標本との対比からも,前立腺癌を示唆する超音波所見は生検での検討と同様に,強く,早い造影効果を示す部位や,流入血管や造影されない部位など,多様であった.
前立腺癌は現在増加の一途をたどっており,今後もますますの患者増が予想される.MRIなどの画像診断から標的生検を試みる症例も増えてきているが,経直腸的超音波検査は前立腺生検時に必須であることから,超音波検査で標的生検が可能になれば非常に大きな意味がある.
【結論】
今回の検討から,造影超音波検査はPSA10ng/ml未満の早期癌が多くみられる患者に有用である可能性が示された.症例の蓄積により,造影超音波による効率のよい前立腺癌診断が実現できる可能性があるものと考えられた.