Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画19 泌尿器:泌尿器超音波は,CT,MRI,PET-CT と戦えるか?

(S220)

腎疾患の診断における超音波の役割

The role of Ultrasound for the diagnosis of renal diseases

平井 都始子, 丸上 永晃, 齊藤 弥穂

Toshiko HIRAI, Nagaaki MARUGAMI, Miho SAITOU

奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

CT, MRIが容易に施行できるようになり,多くの腎腫瘤性病変はCTまたはMRIで診断し治療されている.超音波はスクリーニング検査で,腎腫瘤の発見のきっかけとなるに過ぎない場合が多い.しかし,腎機能の低下した症例や造影CTやMRIで濃染の有無が判断困難な症例では,カラードプラ法や造影超音波による腫瘍血流の評価が診断に有用である.特に乳頭状腎細胞癌や嚢胞性腎腫瘍の良悪性の鑑別診断には,空間分解能がよくリアルタイムに血流を評価でき,しかも腎機能に影響のない造影超音波が優れている.腎血管性病変においては,超音波カラードプラ法で明瞭に描出されるcirsoid typeの動静脈奇形がCTやMRIでは全く同定できないことがあり,描出された血管性病変も形態的な評価しかできない.超音波ではパルスドプラ法により血流波形を撮ることで,腎動脈瘤とaneurysmal typeの動静脈奇形の鑑別が可能であり,狭窄部の最高流速から腎動脈狭窄が有意な狭窄かどうかの判定が可能である.また,腎葉間動脈の血流波形から腎実質障害の有無がある程度評価できるため,腎血管性高血圧症に対する血管内治療の適応評価にも役立つ.ステントやコイルなどを用いた治療後の評価も,超音波が優れている. 近年,注目されるようになった慢性腎臓病(CKD)では,超音波は第一選択の画像診断法として用いられ,腎結石や水腎症の有無,多発性嚢胞腎の診断や腎実質の萎縮の程度の診断に役立っている.最近増加傾向にある糖尿病性腎症では形態的な変化に乏しいが,腎葉間動脈の血流波形は腎機能を反映し,腎移植後の術後合併症の確認や腎血流の経過観察,拒絶反応の評価に用いられ,急性腎不全の原因検索などびまん性疾患においても有用である. 腎腫瘤性病変や血管性病変においては,超音波はスクリーニングのみならずCT, MRIで判断困難な場合の精密検査として,またびまん性疾患や移植腎においては腎血流のモニタとして用いられている.超音波によりCT,MRIを凌駕する情報が得られた症例を提示しながら,超音波の有用性について報告する.