Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画16 消化器:百聞は一見にしかずの消化器疾患症例

(S205)

セミノーマの傍大動脈リンパ節転移例

A case of seminoma with para-aortic lymph node metastasis

小山 里香子, 田村 哲男, 後藤 英晃, 小泉 優子, 今村 綱男, 奥田 近夫, 竹内 和男

Rikako KOYAMA, Tetsuo TAMURA, Hideaki GOTO, Yuko KOIZUMI, Tsunao IMAMURA, Chikao OKUDA, Kazuo TAKEUCHI

虎の門病院消化器内科

Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
セミノーマ(精上皮腫)は精巣腫瘍の中で最も頻度が高く20〜40歳代に好発する.進展すると腎門レベルの傍大動脈リンパ節腫大を認めることがしばしばあるが,陰嚢腫大についての主訴がなくリンパ節転移巣が先行して発見された場合には,日常の内科診療では診察しない部位であることもあり精巣腫瘍に気づかずに悪性リンパ腫を疑ってしまう場合がある.今回われわれは他院の腹部超音波(US)で傍大動脈リンパ節腫大を指摘され悪性リンパ腫が疑われたが,骨盤部まで撮影した腹部CTで初めて右精巣腫瘍を指摘されセミノーマを鑑別疾患として挙げられた症例を経験したので報告する.
【症例】
43歳男性.他院のUSで傍大動脈リンパ節腫大を指摘され精査加療目的に入院となった.血液検査所見ではLDH 751 IU/l,sIL-2R 1470 U/mlと高値を認め,当初は悪性リンパ腫を疑っていた.しかし進展範囲の精査目的に腹部造影CTを施行したところ,右精巣腫瘍を初めて指摘しえた.USではエコー輝度の低い腫大したリンパ節が大動脈周囲を取り囲み,個々の結節は癒合して塊状の腫瘤を形成していた(Fig 1).エコー輝度の低さからは悪性リンパ腫との鑑別が難しかった.また右陰嚢は水瘤を伴い,内部には径60mm超の内部エコーがほぼ均一な精巣腫瘤を認めた.カラードプラでは腫瘤内部に豊富な血流シグナルを認めた(Fig 2).その後の検査でAFP 3μg/l, HCG+β 12mIU/mlであった.以上よりセミノーマが疑われたが悪性リンパ腫も否定はできず右精巣摘除術を施行.病理診断はセミノーマであった.術後化学療法と放射線療法を追加し経過観察中である.
【まとめ】
20〜40歳代の男性で偶然に腎門レベルの傍大動脈リンパ節腫大が発見された場合には悪性リンパ腫だけでなく,精巣腫瘍も疑うことが大切である.