Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画16 消化器:百聞は一見にしかずの消化器疾患症例

(S204)

腹部超音波検査が発見契機となった粘液産生胆管腫瘍の1例

Mucin-producing Bile Duct Tumor detected by Abdominal Ultrasonography

長川 達哉1, 宮川 宏之1, 寺門 洋平2

Tatsuya NAGAKAWA1, Hiroyuki MIYAKAWA1, Youhei TERAKADO2

1JA北海道厚生連 札幌厚生病院第2消化器科, 2JA北海道厚生連 札幌厚生病院第1消化器科

1nd. Department of Gastroenterology, JA Hokkaido-Koseiren Sapporo Kosei Hospital, 2st. Department of Gastroenterology, JA Hokkaido-Koseiren Sapporo Kosei Hospital

キーワード :

症例は50才男性,2003年9月上旬より尿の濃染を時折自覚し,近医を受診した.USにて肝左葉の胆管拡張と左肝管からB4内腔を充満する高エコーな乳頭状腫瘍と拡張胆管内を移動する粘液エコーを認め,精査,加療のため当科へ紹介となる.入院後のCTでは肝門部から左肝管にかけて実質相で淡くenhanceされる腫瘤像とその末梢に左葉優位の肝内胆管拡張を認め,周囲肝実質や門脈への明らかな腫瘍浸潤は見られなかった.腫瘤像のMRI所見はT1強調像iso,T2強調像不均一なhigh intensityであり,造影T1強調像では動脈相から周囲肝実質よりもやや強くenhanceされ,遅延相ではややlow intensityとなっていた.USでは拡張した末梢胆管内に粘液エコーが見られたため経皮経肝的ルートを作成せず,経乳頭的アプローチにて精査を進めた.ERCでは左肝管に20x10mm大の表面平滑な陰影欠損像と末梢の拡張胆管が描出されたが,透亮像はバルーン閉塞下の加圧造影にて末梢側に移動した.また乳頭側に表層進展を疑う造影所見は得られなかった.POCSでは左肝管に表面乳頭状,白色調で可動性のある腫瘤が確認され,生検ではtubular adenomaであった.胆管内超音波検査(IDUS)では左肝管内を充満する肝実質よりもやや高エコーな分葉状の腫瘍が描出され,拡張したB4内腔にも腫瘍の進展が確認されたが,右肝管への進展は認めなかった.壁構造の評価では内側低エコー層の肥厚なく,腫瘍は内腔発育型で深達度はSS浅層まで(大部分がM)と考えられた.血管造影では肝S4付近に中肝動脈を供血路とする淡い腫瘍濃染と新生血管の増生を認めた.CT-A, CT-APでは周囲肝実質や門脈壁への浸潤は否定的であった.左肝管原発の粘液産生胆管腫瘍(腺腫あるいは腺腫内癌)として肝左葉切除,肝外胆管切除,胆嚢摘出術が行われた.病理所見では左肝管に主座を置く乳頭膨張型の胆管癌でありB4内腔にも進展し,大量の粘液貯留を認めた.左肝管の腫瘍は可動性があり腫瘍塞栓様に上部胆管へ突出していたが,乳頭側への表層進展は見られなかった.組織学的所見はCarcinoma of the left hepatic duct (Mucin-producing bile duct tumor), Pat-Bl, Papillary expansive type, m, s(-), hinf0, ginf0, panc0, du0, pv0, a0, n(-)(0/12), hm0, dm0, em0, Adenocarcinoma (carcinoma in adenoma, tub1>pap), med, INFα, ly0, v0, pn0であった. 粘液産生胆管腫瘍は1990年に梛野らにより“臨床レベルにおいても認識し得る程の多量の粘液を産生する胆管腫瘍”と定義されているが,臨床病理学的に膵臓のIPMNとの共通性があり,胆管系のcounterpartであるIPN-B(Intraductal papillary neoplasm of bile duct)の一亜型であるとの説もあるが,その疾患概念については未だcontroversialである.画像的特徴としては胆管拡張と粘液貯留,乳頭状あるいは嚢胞状腫瘍の描出が報告されているが,これらの特徴を念頭においた腹部超音波検査によるscreeningあるいは精査が必要と考えられた.