Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画16 消化器:百聞は一見にしかずの消化器疾患症例

(S203)

胆道系疾患におけるガス像---超音波検査の“動き診断”

Visualizing movement of small bubbles in patients of biliary disease by US

大山 葉子1, 石田 秀明3, 星野 孝男2, 紺野 純子1, 高橋 律子1, 三浦 百子1, 斎藤 千春1, 長沼 裕子4, 渡部 多佳子3, 渡部 博之2

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA3, Takao HOSHINO2, Jyunko KONNO1, Ritsuko TAKAHASHI1, Momoko MIURA1, Chiharu SAITOH1, Hiroko NAGANUMA4, Takako WATANABE3, Hiroyuki WATANABE2

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4横手市立病院内科

1Department of Clinical Laboratory, Akita General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita General Hospital, 3Department of Ultrasoud Center, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Internal Medicine, Yokote City Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波診断は時間分解能に優れており,その特性を生かして循環器領域では以前より動画やMモード中心としたいわゆる“動き診断”がなされてきた.しかし腹部領域に関しては形態学的な診断が中心となり,病変部と超音波像のマクロ的な対比が診断の中心となってきた.この傾向はとくに胆道系疾患の診断に関して顕著であった.一方超音波検査による微小ガスの検出能が優れていることは以前より知られており,少量の遊離ガスの検出には最も鋭敏な検査と考えられてきた.今回われわれは,胆道系疾患にみられた微小ガスの動きに注目し,“動き診断”が胆道系疾患の診断にどの程度寄与するかを検討した.ここでは主旨を明確にする目的で,以下の4例の超音波像をその動きについて動画を中心に供覧したい.
【使用診断装置】
:東芝社製AplioXG・XV,GEヘルスケア社製LOGIQE9.
【症例1】
70歳代男性:右上腹部痛を主訴に来院し,超音波検査にて胆のうに炎症所見とCTでは描出出来なかった内腔を移動するガス像を認め,気腫性胆のう炎と診断.同日胆のうドレナージ施行し胆汁培養にてCl.perfringensが検出された.術後経過は順調であった.
【症例2】
90歳代女性:一過性の腹部不快感を主訴に来院し,腹部超音波検査で胆のう壁全体にガス像を認め,その一部が肝内に広がっていく様が動画で観察され,気腫性胆のう炎と診断.胆のうドレナージにてCl.perfringensが検出された.
【症例3】
80歳代男性:右上腹部痛を主訴に救急受診.超音波で胆のう壁全体に広がったガスに加え,胆のう内腔を移動する微小ガを多数認め,気腫性胆のう炎と診断.同日緊急胆のう摘出施行,術後経過は順調であった.
【症例4】
70歳代女性:下部胆管癌にてステント挿入減黄術施行の既往あり.腹部不快感・発熱出現し,超音波所見とFFT波形で門脈ガスを確認,同時に胆管壁肥厚と内部にdebrisを認め,胆管炎による門脈ガスと診断された.ステント交換等により,症状,超音波所見は改善した.
【まとめと考察】
胆道系疾患における微小ガスの動きを把握することで,気腫性胆のう炎の超音波診断精度は一層向上するものと思われる.今回の症例で示された様に,a)胆のう壁内を移動する,b)胆のう内から肝内に移動する微小ガス像を,更には門脈内の微小ガスの動きを,明瞭に描出できた.この所見はCTでは描出困難であった.その鋭敏な検出能は,1)優れた空間分解能(微小ガス自体をとらえられる)と,2)優れた時間分解能(わずかな動きが動画でしっかりと認識できる)という利点から来ており,気腫性胆のう炎の診断に超音波検査は極めて有用と思われた.特に,このような優れた時間分解能は超音波検査以外の他の画像診断には期待出来ないものであり大いに活用すべきと思われた.
一方胆管炎に伴う門脈ガスは胆管炎の程度が高度な場合に出現すると考えられ,今後胆管炎症例において考慮されるべき所見である.門脈内を移動するガスはMモード,更にFFT波形で確認が可能であった.特にFFT波形に関しては微小ガスの最終診断ともなりえる事から,今後微小ガスの存在を疑う場合には積極的に試みるべき手法と思われる.
このように胆道系症例において動きを捉える事は,静止画では得られない診断的価値を付加するものと思われる.微小ガスの動きは一度見たら忘れられないインパクトがある.それを動画で示したい.