Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画16 消化器:百聞は一見にしかずの消化器疾患症例

(S202)

糖原病のⅠa型の超音波診断

The ultrasonic diagnosis of von Gierke disease

新井 行平1, 小川 眞広2, 滝口 好子1, 杉本 朝子1, 碓井 ひろみ3, 石毛 美夏3, 麦島 秀雄3, 高山 忠利4, 絹川 典子5, 杉谷 雅彦5

Kouhei ARAI1, Masahiro OGAWA2, Yoshiko TAKIGUCHI1, Asako SUGIMOTO1, Hiromi USUI3, Mika ISHIGE3, Shigeo MUGISHIMA3, Tadatoshi TAKAYAMA4, Noriko KINUKAWA5, Masahiko SUGITANI5

1駿河台日本大学病院臨床検査部, 2駿河台日本大学病院内科, 3駿河台日本大学病院小児科, 4日本大学医学部附属板橋病院消化器外科, 5日本大学医学部附属板橋病院病理学教室

1The Clinical Laboratory Division, Nihon University School of Medicine, 2Gastoroentererology and Hepatology, Nihon University School of Medicine, 3Pediatrics, Nihon University School of Medicine, 4Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, 5Department of Pathology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【目的】
糖原病は,常染色体劣性遺伝病である先天的な酵素欠損によってグリコーゲンの蓄積がもたらされる疾患である.Ⅰ〜Ⅷ型に分類されるが,この中で肝臓のglucose-6-p hosphatase先天的な酵素欠損によって肝や腎へのグリコーゲンが蓄積する糖原病Ⅰ型(von Gierke disease)がある.通常生後数ヶ月から数歳で発見され耐糖能異常,低血糖症状,肝腫大などの症状が特徴とされる.糖原病は稀な疾患ではあるが肝と腎にグリコーゲンが蓄積するⅠa型においては比較的予後良好とも言われさらに早期発見と近年治療法の改善と共に長期経過観察例も存在するようになり成人例での超音波検査も施行する機会も増えている.さらに特徴的な肝・腎所見を呈するほか本疾患の長期経過観察症例には肝腫瘍の合併も指摘されることも多く超音波画像の特徴を把握し悪性疾患との鑑別を行うことが必要となる.今回糖原病Ia型の特徴的な超音波画像を提示すると共に肝腫瘍性病変に行われた造影超音波検査を施行したので報告する.
【方法】
対象は,駿河台日本大学病院で超音波検査が施行された6症例である.平均年齢31.2歳(21〜58歳)全例女性である.超音波B-mode像で観察を行ない,腫瘍性病変を注中心に造影超音波検査を施行した.使用診断装置:GE横河メディカルシステムLOGIQ7,E9,使用探触子3.5Cs,4C,C1-5,9L.造影超音波検sonazoid 0.015ml/kgまたは0.5ml/bodyの急速静注で行い撮影はCPI(Coded phase inversion mode),またはphase inversion法を使用.静注後約40秒までをarterial phase,10分以降をpost vascular phaseとした.
【成績】
全例肝の両葉腫大と肝縁の鈍化を認め程度の差は若干の差はあるものの深部方向への減衰をあまり伴わないBrightnessの上昇を認めた.肝腫瘍性病変は全例に認め各症例の最大腫瘍径の平均値は23mm(7〜35mm)であった.造影超音波検査は,1例の肝細胞癌切除症例で早期の腫瘍血管を伴う濃染像とpost vascular phaseの欠損像を認める他はarterial phaseで淡い腫瘍濃染像を認めるのみでpost vascular phaseで欠損像は呈していなかった.腎所見は,腎不全を認める症例と認めない症例で二分され腎障害を認めない症例において腎盂周囲に高エコー層が生じるのが特徴的であった.
【結論】
糖原病Ia型の超音波検査は,肝臓,腎臓の全体的な評価をする上で重要でありさらに肝腫瘍性病変の精密検査としても造影超音波検査が有用であることが確認された.今回1例肝細胞癌の合併症例も存在することより定期的な検査と悪性疾患を考慮した精密検査も必要であることがわかり,特に腎障害が有する症例も存在するため他の検査と比較しても超音波検査の役割は高いと考えられた.