Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画16 消化器:百聞は一見にしかずの消化器疾患症例

(S201)

異なる肝臓の超音波像を呈したRendu-Osler-Weber病の2症例

Two cases of Rendo-Osler-Weber disease

伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 窪田 幸一1, 宇賀神 陽子1, 竹内 和男3

Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Koichi KUBOTA1, Yoko UGAJIN1, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
Rendu-Osler-Weber(ROW)病は遺伝性出血性毛細血管拡張症ともよばれ,常染色体優性遺伝性疾患である.皮膚・粘膜・内臓の多発性毛細血管拡張,反復性出血を主徴とし,肝臓にも脈管系の異常が見られる疾患である.
【目的】
ROW病における肝臓の超音波像では特徴的な2パターン像があり,超音波検査にて特徴的な病態把握が可能であるため,報告する.
【症例1】
70歳代,男性.鼻出血,肝性脳症をくり返し,非代償性肝硬変として紹介受診.血中アンモニア値は102μg/dlであった.Bモードでは肝臓の萎縮はなく,内部エコーは粗造であるも結節像はみられず,動脈のコイル状拡張を認めた.門脈および肝静脈も太く描出された.脾腫は軽度であった.カラードプラでは豊富な血流が確認され,動脈-静脈シャントおよび門脈-静脈シャントの多発像がみられた.ソナゾイド造影エコーでは太くコイル状に拡張した動脈から肝静脈へと造影剤の速やかな流出が確認出来,肝内のシャント形成が示唆される所見が得られた.血管相および後期相において,肝内に結節性病変は認めなかった.
【症例2】
60歳代,女性.鼻出血をくり返していた.近医で超音波,CT検査にて肝内に腫瘤性病変が疑われ,精査目的で受診.血中アンモニア値は63μg/dlであった.Bモードでは肝S8径20mm大の辺縁低エコー帯を伴わない,境界不明瞭で内部不均一な低エコー結節を認めた.また,肝動脈はコイル状拡張所見を認め,門脈・肝静脈も太く描出された.他の肝内部エコーは粗造であり,脾腫はみられなかった.カラードプラでは豊富な動脈および静脈血流が観察され,動脈-静脈シャントおよび門脈-静脈シャントの多発像がみられた.ソナゾイド造影エコーでは早期から肝内に造影剤が流入し,腫瘤影は内部不均一に濃染像が認められた.後期相では結節の内部にdefectを認めた.同部位は細径針生検では壊死を伴う,FNH様結節の診断であった.血管相では肝内に多発して同様の結節像を認めるも,後期相では多くの結節像は描出されず,比較的均一な肝実質像を呈した.以上の超音波所見を支持するような,所見はCTおよびMRIでもみられる.ダイナミックCTでは動脈相にて肝静脈が造影される.また,EOB-MRIの肝細胞相ではFNH様結節はチクワ状の高信号結節として描出される.
【まとめ】
ROW病は肝臓に関しては超音波像として,Bモードではコイル状の動脈の拡張と肝静脈の拡張が特徴的であり,多発A-Vシャント並びにP-Vシャントがカラードプラで確認出来る.この特異的な所見でROW病の診断は可能である.ソナゾイド造影エコーでは血管相にて動脈から静脈までが早期に造影される.肝実質の造影効果は均一であり,後血管相では肝内にdefectを呈さない.しかしながら,一部の症例ではFNH様病変を合併し,更に多彩な結節像がみられる.Bモードおよびソナゾイド造影エコーにてこの壊死,再生を反映した画像が得られる.ROWで肝実質に腫瘤像を認めた場合にはこのようなFNH様変化が合併している可能性がある.