Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画15 領域横断:各領域において超音波はこの点でCT・MRI に優る

(S199)

微小肝細胞癌に対するSonazoid造影超音波とEOB-DTPA造影MRIの検出能の検討

Detectability of minute hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasonography and EOB-DTPA-enhanced MRI

多田 俊史1, 熊田 卓1, 豊田 秀徳1, 竹島 賢治2, 小川 定信2, 乙部 克彦2, 高橋 健一2, 坂野 信也2

Toshifumi TADA1, Takashi KUMADA1, Hidenori TOYODA1, Kenji TAKESHIMA2, Sadanobu OGAWA2, Katsuhiko OTOBE2, Kenichi TAKAHASHI2, Nobuya BANNO2

1大垣市民病院消化器科, 2大垣市民病院医療技術部診療検査科

1Department of Gastoroenterology, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
血管造影下CTをゴールドスタンダードとして診断された微小肝細胞癌に対するSonazoid造影超音波とEOB-DTPA造影MRIの検出能の比較・検討を行う.
【対象と方法】
対象は血管造影下CTが施行されCTAPで低吸収かつCTHAで高吸収が認められた30mm以下で単発の典型的肝細胞癌のうち,Sonazoid造影超音波とEOB-DTPA造影MRI の両方が施行された78名,78結節である.これらをA群:〜10mm,B群:11mm〜20mm,C群:21mm〜30mmに分類し,Sonazoid造影超音波とEOB-DTPA造影MRIの検出能の比較・検討を行った. X線CT装置は東芝社製 X vision Real (IVR-CT/Angio system) を使用し,CTAPは造影剤70mlを2mml/秒で注入し,造影開始30秒後より1相をスライス厚7mmで撮像,CTHAは造影剤25mlを1.2ml/秒で注入し,造影開始10秒後と50秒後より各1相をスライス厚7mmで撮像した. 超音波装置は東芝社製 Aplio XGを使用し,Sonazoidは0.0075ml/kgをボーラス注入し15秒から60秒までを血管相,10分後を後血管相として撮像した.それぞれの時相は,血管相では周囲肝実質より血流の増加が認められるものをhyper,同等をiso,低下をhypo,また後血管相はそれぞれ等エコー,低エコー,欠損に分類した.MRI装置はPHLIPS社製 Achieva 1.5T Novaを使用した。EOB-DTPAは0.1ml/kgを1.5ml/秒で注入し,後押し用の生理食塩水は35mlを2ml/秒で注入した.造影前T1強調像はFFEのdual echo法にてin phaseおよびopposed phaseを,Dynamic-studyはTFEの3D収集にて動脈2相,門脈相,後期相の計4相を撮像し,造影後はTSE法にてT2強調像,TFEの3D収集にて肝細胞造影相の順に撮像し,Dynamic-studyの撮影を開始するタイミングはBolusTrak法を用い,腹部大動脈の濃染を確認後とし,肝細胞造影相は15分後に撮像した.Dynamic-studyの動脈相で濃染所見が認められるものを高信号,濃染が認められないものを等信号さらに低下しているものを低信号に分類し,肝細胞造影相では周囲肝実質と比較して低信号,等信号,高信号と分類した.
【結果と考察】
平均腫瘍径はA群(n=12):9.2±0.8mm,B群(n=46):15.8±2.9mm,C群(n=20):24.1±2.4mmであった.これら結節のSonazoid造影超音波動脈相はhyper/hypoの順にA群:7結節/5結節,B群:40結節/6結節,C群:18結節/2結節で,後血管相は等エコー/欠損もしくは低エコーの順にA群:6結節/6結節,B群:19結節/27結節,C群:7結節/13結節であった.またEOB-DTPA造影MRI動脈相は高信号/等信号/低信号の順にA群:7結節/3結節/2結節,B群:23結節/23結節/0結節,C群:15結節/3結節/2結節で,肝細胞造影相は高信号/等信号/低信号の順にA群:1結節/0結節/11結節,B群:1結節/0結節/45結節,C群:0結節/1結節/19結節であった.動脈相における腫瘍血流の検出率(Sonazoid造影超音波/EOB-DTPA造影MRI)は,A群:58.3%/58.3%,B群: 87.0%/50.0%,C群:90.0%/75.0%であった.さらにSonazoid造影超音波後血管相/EOB-DTPA造影MRI肝細胞造影相の検出率はA群:50.0%/100%,B群:58.7%/100%,C群:65.0%/95.0%であった.今回の結果からは微小肝細胞癌に対するEOB-DTPA造影MRIの肝細胞造影相での検出能は良好であった.しかし,動脈相での腫瘍血流の検出能は,腫瘍径が10mm以下でSonazoid造影超音波とEOB-DTPA造影MRIは同等であり,さらに腫瘍径が11mm〜30mmの群でSonazoid造影超音波の方がEOB-DTPA造影MRIよりも良好であった.
【結語】
微小肝細胞癌の治療必要度は動脈相における血流の有無が重要である.すなわち動脈相において血流所見が認められたならば,積極的な治療対象となる.今回の検討からは,Sonazoid造影超音波はEOB-DTPA造影MRIよりも微小肝細胞癌に対する動脈相での血流検出能に優れており,その診断(悪性度)および治療方針を決定するために不可欠な検査法であると考えられた.