Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画15 領域横断:各領域において超音波はこの点でCT・MRI に優る

(S198)

びまん性肝疾患における超音波検査のアドバンテージ:病態に迫る診断・評価を手軽に,かつ繰り返し行える

Usefulness of Ultrasonography in the Evaluation of Chronic Liver Disease

和久井 紀貴1, 高山 竜司1, 神山 直久2, 住野 泰清1

Noritaka WAKUI1, Ryuuji TAKAYAMA1, Naohisa KAMIYAMA2, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東芝メディカルシステムズ超音波開発部

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center, 2Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

近年,肝組織性状診断におけるCT・MRIの進歩はめざましく,線維化や脂肪化の定量などそれぞれの特性を生かした信頼性の高い診断が可能となりつつある.一方超音波検査に関してはすでに語り尽くされた感はあるが,実時間性に優れる,その実時間観察を許される限り続けられる,微細構造の空間分解能に優れる,可搬性に冨み万人が操作可能,経済性等々,いまだ他の追随を許さない利点が沢山あり,これらは臨床の場で大変役に立つものである.ここではびまん性肝疾患診断における超音波検査のアドバンテージについて述べる.
【実質像を読む】
超音波ではその繊細な空間分解能により,血管などの肝実質内構造物だけでなく,スペックルシグナル中に含まれる組織情報から疾患特異性の高い特徴的パターンが描出される.肝硬変の粗造,B型慢性肝炎のメッシュワーク,脂肪肝やアルコ-ル性肝線維症のブライト,日住虫症の屋根瓦など日常の診断に当たり前の用に使われている所見がそれである.
【硬さ・線維化を診る】
剪断波伝搬速度の計測や組織ゆがみの画像化で肝実質の硬さ,線維化の程度を把握する手法が開発され,すでに臨床の場で使われ始めている.我々の施設では前述のスペックルシグナルを解析する手法(Acoustical structure quantification:ASQ)を用いて線維化様式の可視化を試みており,肝硬変結節の大小,線維性隔壁の厚薄の情報が得られつつある.
【血流解析】
造影超音波で得られる情報は,高い空間・時間分解能に支えられ,きわめて詳細な肝血流の解析が可能である.我々の施設では現在,造影早期血管相におけるarrival-time parametric image(API)および後血管相(Kupffer phase)におけるマイクロバブル崩壊深度(flash-replenishment sequence:FRS)を検討している.まずAPIの成績であるが,HCV関連慢性肝疾患229症例で検討した結果,肝実質perfusionをもたらす血流は,病変進展とともに門脈優位から動脈優位へと変化することが判明した.そこでAPIのカラーマップピクセル数をカウントしたところ,肝の線維化ステージと良好な相関を示した.また,動脈優位のパターンを呈するようになると食道静脈瘤や腹水の合併が有意に増加し,perfusionの動脈化が門亢症発現に寄与している可能性が示唆された.一方FRSによるバブル崩壊深度も肝生検施行慢性肝疾患111例で検討した結果,線維化ステージと良好な相関を示した.こちらはAPIと異なり,カラーピクセル数のカウントという一手間をかけずに視覚的に線維化をとらえることができるため,臨床的にはより使いやすい手法と考える.Perfusionや線維化の検討は近年CTやMRIでも行われるようになったが,被爆やコストが問題となっている.最後にUS・CT・MRIのコストをまとめて示す.〔造影なし〕US:530点,CT:900点,MRI:1330点 〔造影あり〕US:1980点,CT:1879点,MRI:3626点.
【結語】
慢性肝疾患の病変進展度評価や血流動態評価を含むびまん性肝疾患の診断にはUSが向いている.