Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画14 循環器:左室拡張機能評価法を整理して理解する

(S192)

TMFと運動負荷

Diastolic stress echocardiography

高木 力

Tsutomu TAKAGI

高木循環器科診療所循環器内科

Cardiology, Takagi Cardiology Clinic

キーワード :

【背景】
僧帽弁通過血流速波形(TMF)のE/A測定は左室拡張能を簡便に評価する方法として日常診療で用いられている.偽正常化パターンが存在することが本法の最大のlimitationである.そのために肺静脈血流速波形記録,Mモードカラードプラ法を用いた左室内流入伝播速度,組織ドプラ法を用いたE/E’などの方法が用いられている.しかし,その簡便性ゆえに,1990年台から運動負荷やドブタミン負荷心エコー図にTMFを併用することの有用性が報告されている.だだし,それらは虚血性心疾患の検出についての報告である.高血圧や糖尿病を基礎疾患とした高齢者の労作時胸部症状の原因として,虚血性心疾患はもちろん重要であるが,左室拡張障害も重要である.運動負荷拡張能評価(diastolic stress echocardiography)がその診断に有用であることが報告されている.ただし,diastolic stress echocardiographyの中長期的有用性については不明である.
【目的】
Diastolic stress echocardiographyの中長期的な有用性を検討すること.
【方法】
2001年9月から2004年5月までの期間にトレッドミル負荷心エコー図を実施した連続209症例のうち,60歳以上の133症例を対象とした.通常のトレッドミル負荷心エコー図に加え,安静時と負荷後にTMFを測定した.安静時E/A≧1.0の症例は除外した.負荷後E/A≧1.0を異常群,負荷後E/A<1.0を正常群とした.5年間追跡調査し,突然死,心筋梗塞,血行再建術,新規心房細動などの心血管イベントについて検討した.
【結果】
126例(95%)について5年間追跡可能で,心血管イベントを30件認めた.126例中42症例(33%)で負荷後E/A≧1.0を認めた.Kaplan-Meier解析では,異常群は正常群と比較して心血管イベント発生率が高く(p<0.0001),新規心房細動発生率が高かった(p=0.0003).Cox比例ハザード解析では,運動負荷後E/A≧1.0が新規心房細動発症を含む心血管イベントの危険因子であった(HR=4.494(1.925-10.490),p=0.0005).
【結語】
Diastolic stress echocardiographyは高齢者の中長期の心血管イベント予測に有用である.