山浦 泰子

Yasuko YAMAURA

兵庫県予防医学協会循環器内科

Cardiology, Hyogo Health Service Association

キーワード :

【目的】
慢性腎不全にて人工透析中に，左室内に可動性を伴う異常エコーが認められた症例を経験したので，報告する．
【症例1】
80才，女性　主訴：呼吸困難　現病歴：20年来，高血圧，糖尿病性腎症にて，外来通院中であった．腎不全進行のため，腹膜透析導入目的で腎臓内科に入院となった．入院時，重度の代謝性アシドーシスが認められ，緊急に血液透析導入となった．血液透析導入直後より急性左心不全症状が出現し，循環器内科転科となった．入院時理学所見：身長 142cm, 体重 40Kg，起座呼吸を呈した．血圧 160/80 mmHg，脈拍 77/分,整，体温 36.5℃．聴診では，心；心尖部にて全収縮期雑音 （LevineII/VI）を聴取，肺；全肺野にてラ音聴取．腹部触診で異常なく，両下腿に浮腫を認めた．血液検査所見：WBC 5950 μ/l，RBC 236 x104/μl，Hb 7.2 g/dl，Ht 20.4 %Plt 7.1 x104/μl，Na 134 mEq/l，K 3.2 mEq/l，Cl 108mEq/l，P 4.3mEq/l，Ca 7.2mEq/l，TP 4.8 g/dl，Alb 2.3 g/dl，ALT 14 IU/l，AST 37 IU/l，LDH 332 IU/l，CRN 6.46 mg/dl，BUN 86 mg/dl，CK 243 IU/l，CK-MB 57 IU/l，CRP 1.17 mg/dl．心エコー・ドプラ法にて，左室壁運動異常と，左室内に可動性を伴う異常エコーが認められた．
【症例2】
70才，男性　主訴：労作時胸痛　現病歴：慢性腎不全にて4年前に腹膜透析を導入，通院中であった．6ヶ月前に透析効率低下にて，血液透析を導入し，併用となった．1ヶ月前より除水量が減少し，左心不全症状が出現し，入院となった．入院時理学所見：身長 167cm, 体重 60Kg，血圧 160/84 mmHg，脈拍 72/分,整，体温 36.6℃．聴診では，心；心尖部にて全収縮期雑音 （LevineII/VI）を聴取，肺；両下肺野にてラ音を聴取した．腹部，下肢は，異常なし．血液検査所見：WBC 3430 μ/l，RBC 297 x104/μl，Hb 9.1 g/dl，Ht 26.4 %，Plt 11.0 x104/μl，Na 132 mEq/l，K 4.1 mEq/l，Cl 95 mEq/l，P 5.3 mEq/l，Ca 7.4 mEq/l，TP 4.8 g/dl，Alb 2.6 g/dl，AST 10 IU/l，ALT 15 IU/l，LDH 275 IU/l，CRN 12.4 mg/dl，BUN 67 mg/dl，CRP 0.03 mg/dl．心エコー・ドプラ法にて，左室内に可動性を伴う異常エコーが認められた．当日は，以上の症例について，心エコー・ドプラ像を供覧し，鑑別診断を含め，診断，治療方針等について検討，考察する．