Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画13 領域横断:この超音波,どう読みますか?

(S189)

僧帽弁置換術後の定期検診時心エコー図検査でみられた拡張期左房内カラーシグナル

Diastolic color signal in the left atrium at a regular check-up echocardiographic examination after mitral valve replacement

泉 知里1, 三宅 誠1, 高橋 秀一2, 橋和田 須美代2, 桑野 和代2, 松谷 勇人2, 中川 義久1

Chisato IZUMI1, Makoto MIYAKE1, Shuichi TAKAHASHI2, Sumiyo HASHIWADA2, Kazuyo KUWANO2, Hayato MATSUTANI2, Yoshihisa NAKAGAWA1

1天理よろづ相談所病院循環器内科, 2天理よろづ相談所病院臨床病理部

1Department of Cardiology, Tenri Hospital, 2Department of Clinical Pathology, Tenri Hospital

キーワード :

症例:46歳男性
主訴:無症状(定期検診目的)
現病歴:16年前,腱索断裂による僧帽弁逆流にて他院で僧帽弁置換術施行(二葉弁).転居に伴い,8年前より当院心臓血管外科に通院.今回4年ぶりに定期検診のため受診.特に症状はなし.身体所見:血圧 154/72 mmHg,脈拍72/分,体温 36.2 ℃,心音:心雑音なし採血データ:WBC 4300/mm2,CRP<0.2,PT 20.0sec (INR 2.55),LDH 756 IU/L定期検診のための心エコー図検査が施行された.左室壁運動は正常(Dd:5.6cm,Ds:4.1cm,EF:61%),僧帽弁は人工弁で,弁葉の動きは良好のように見えたが,2葉を明瞭に確認はできなかった.カラードプラでは,音響陰影のため,僧帽弁逆流は評価できず.左室流入血流波形では,E波最高流速161cm/sec,E波減速時間 534msec(PHT: 156msec).4年前の左室流入血流波形はE波最高流速155cm/sec,E波減速時間496msec,PHT: 145msecであり,明らかな変化を認めなかった.その他の所見として,拡張期に左房内にカラーシグナル(図)がみられた.人工弁置換術後の心エコー図検査は,①音響陰影やサイドローブ,多重反射など人工物によるアーチファクト,②開心術後の画像不良,③人工弁の種類やサイズ,患者の状態による多様性などにより,検査の解釈が困難な場合が少なくない.一方で,弁機能不全の初期は無症状であることも多く,心エコー図検査における異常所見が,その早期発見の手がかりとなる.弁のサイズや種類,発熱や貧血の有無などを前もって確認してから検査に望むことが必要であり,また,所見の解釈に迷う場合は,以前の検査と比較することが重要である.弁機能不全が疑われた場合は,至急報告が必要となる.本症例では,無症状であり左室流入血流波形も以前のものと明らかな変化なく,弁機能不全と断定できなかった.2ヶ月後,突然の呼吸困難で救急受診,急性肺うっ血の状態で即日入院となった.今回の心エコー図検査では,高度僧帽弁逆流を認め,弁機能不全による急性心不全と診断,緊急手術となった.2ヶ月前の定期検診時の心エコー図検査の所見から,弁機能不全を診断できたかどうかについて考えたい.