Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画13 領域横断:この超音波,どう読みますか?

(S188)

診断に苦慮した心臓腫瘍の1例

A case of cardiac tumor that proved difficult to diagnose

市川 裕美1, 高梨 昇1, 秋 顕2

Masami ICHIKAWA1, Noboru TAKANASHI1, Akira AKI2

1東海大学医学部付属八王子病院中央臨床検査科, 2東海大学医学部付属八王子病院心臓血管外科

1Department of Clinical Laboratory, Tokai University Hachioji Hospital, 2Department of Cardiovascular Surgery, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

【症例】
30歳代男性
【既往歴】
特記すべきことなし
【現病歴】
2007年より前胸部に圧迫感を時々認めていた.2009年5月,会社検診で胸部異常陰影を指摘.同年6月,体動,深呼吸時に前胸部痛あり,改善ないため他院循環器内科を受診.胸部レントゲンにて右第2弓の突出を認めたため,心エコー検査を施行したところ,右房に約5cmの腫瘍を認め,右房内腫瘍疑いにて精査・治療目的にて当院紹介受診となった.
【入院時理学所見】
身長180cm,体重62kg,血圧140/80mmHg,脈拍87/分,心雑音なし
【腫瘍マーカー】
CEA:1.7 ng/ml,AFP:2.2 ng/ml,CA19-9:12.9 U/ml,SCC:0.6 ng/ml,CYFRA:1.0 ng/ml未満,PIVKA-2:21 mAU/ml,IL-6:1.8 pg/ml
【経胸壁心エコー検査】
四腔断面で右房側に約51×49mmの巨大腫瘤を認めた.腫瘤の内部エコーは不均一で,中心部に低エコー部分を伴っていた.また,内部に僅かな血流シグナルが確認された.後方エコーの減衰なく,超音波の透過性良好な腫瘤であった.描出内で明らかな茎は確認されず,可動性は乏しかった.
【経食道心エコー検査】
大動脈と左房の間の脂肪織から栄養血管と思われる血流が腫瘤にむけて流入していた.三尖弁輪には接しておらず,かろうじて右房のfree wall側は確認できた.血流豊富な腫瘤で,表面は比較的smooth,一部被膜様の境界エコーを認めた.
【心臓造影CT】
腫瘤は直径6.7cm,動脈相で周囲から造影効果が出現し,平衡相でも造影効果が持続されていた.内部は低吸収で,壊死が疑われた.主要な栄養血管がRCA#1から分枝していた.
【心臓MRI】
腫瘤はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈し,造影時には中心部を除く部位で信号増強がみられた.
【心臓カテーテル検査】
左冠動脈および右冠動脈ともに有意狭窄はなく,LCX左房枝より腫瘤への栄養血管を認めた.RCA#1からも栄養血管を認め,腫瘤の濃染がみられた.
【入院後経過】
2009年6月25日,心臓腫瘍摘出術施行.経過良好で,7月4日退院となった.