Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画12 領域横断:診療報酬点数表でなぜ超音波は画像診断ではないのか? 問題点と対策

(S186)

超音波診断は「画像診断」となりえるか.-放射線科医の視点よりその問題点を論じる-

Is ultrasonographic examination equal to ‘diagnostic imaging’? - the problem discussed from a radiologist’s viewpoint-

辻本 文雄

Fumio TSUJIMOTO

聖マリアンナ医科大学臨床検査医学

Department of Laboratory Medicine, St.Marianna University, School of Medicine

キーワード :

 私の専門領域である体表臓器・腹部超音波診断に絞り,超音波検査・診断が「画像診断」となりえるかを論じる.「画像診断」とは,電離放射線(X線等),超音波,核磁気共鳴等を用いて,疾患に伴う形態の変化を画像化し,診断すると定義されることが多い.しかし,診療報酬点数表上での,「画像診断」の項目は,エックス線診断(X線撮影,血管造影),核医学診断(シンチグラフィ,PET),コンピュータ断層撮影診断(CT,MRI)に限定され,超音波は除外され,内視鏡と同じ,「検査」の項目に入る.乳腺・甲状腺をはじめとする体表検査の保険点数は350点であり,腹部は530点である.一方,「画像診断」のおおよその保険点数は,マンモグラフィ500点,造影CT 3500点,造影MRI 4000点である.パルスドプラ法200点,造影(超音波造影剤)150点を加算しても,超音波検査・診断はその労力に見合うだけの保険点数に及ばないことは明らかである.超音波検査が「画像診断」として認定された場合,その最大の利点は,「画像診断」では撮影料(検査料)に加え,フィルム代,画像診断料が算定できることにある.現時点では,超音波検査は記録に要する費用も検査料に全て含まれる.画像診断料のうち最も点数が高いのがCT・MRIにおける断層診断料450点である.超音波検査・診断が「画像診断」に組み込まれた場合,断層像であることより,最大450点が算定されることになれば,放射線領域の保険点数の総額と超音波がほぼ拮抗している現状が一気に崩れて,超音波が2倍近くになり得る危惧がある.CT,MRI等の機器に比べ,超音波診断装置の価格は10分の1程度のものがほとんどであり,100万円を切る低価格装置も市場に出回りつつある.画像診断料を単純エックス線撮影並みの43〜85点とみなすのでは,保険点数は低すぎるとも考えられるが,マンモグラフィを例に挙げると,写真1枚に付き85点で,両側2方向の撮像で,85+33(85/2)+33+33=184点となる.超音波も写真1枚に付き画像診断料を算定するのではなく,ある適当な点数を模索する必要がある.これまで述べたことは,超音波診断が「画像診断」となりえた場合であるが,そもそも超音波診断は「画像診断」となりえるのであろうか.検査者によりその診断率に著しい差があり,偽陽性あるいは偽陰性が著しく多い.検査者と読影者が異なる場合,その再現性の無さより,検査者の得た所見を読影者が参考にしなければ読影は不可能に近い.「画像診断」としての致命的な欠陥は,再現性の欠落に有ると言える.私の施設では,放射線専門医会超音波検査画像標準化ワーキンググループの依頼を受けて,腹部超音波検査撮像法の手順(案)を決め,動画による記録を120症例に対して行った.造影CTをgold standardとしたとき,静止画として保存されて診断の確定したものに比べ,造影CTとの対比も容易で,再現性が向上する結果となった.この手順に沿って超音波検査がなされた場合は,「画像診断」となりえる可能性を持つが,ぎりぎりの「画像診断」と考える.最近,臨床の場に導入された乳房自動走査装置を使用した全乳房ボリュームスキャンであれば,ほぼ再現性のある画像が全乳房に対して得られることより,「画像診断」と認定できる.「画像診断」の役割は,適正な検査下に,適正な診断を下すことができる画像を作ることが必要不可欠である.動画を含めたボリュームデータを超音波検査でも求められることになり,それをクリアーしなければ,「画像診断」となりえないと考える.