Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画11 体表:乳腺・甲状腺の硬さ評価2011

(S183)

Shear Wave Elastography (SWE)の評価

Clinical evaluation for Shear Wave Elastography (SWE)

中村 清吾

Seigo NAKAMURA

昭和大学医学部乳腺外科

Department of Breast Surgical Oncology, Showa University School of Medicine

キーワード :

我が国では,欧米に比べ,マンモグラフィ検診の普及率が低く,未だ乳癌の死亡率は右肩上がりの状況にある.が,その一方で,米国USPFTFは,特に40歳台マンモグラフィ検診の不利益(見落としや過剰診療)の点で推奨グレードをBからCに下げている.こうした中で,超音波検診をどのように組み合わせるかに注目され,我が国でもJ-STARTという大規模臨床試験が行われている.乳腺エラストグラフィは,従来のBモードに基づく超音波画像診断に加え,組織弾性という新たな情報が得られ,乳腺疾患の良悪性の鑑別診断に寄与することが期待されている.当院では,いわゆる横波を用いて組織弾性を定量値(絶対値)として示すことができるShear Wave Elastography (SWE)を導入し,その有用性を検討してきた.SWEにおける組織弾性の定量値は,キロパスカルで表示され,カラーマップ画像でリアルタイムに表示される.探触子で患部を圧迫する必要がないので,ユーザースキルに依存せず,再現性に優れた測定データを取得できる特徴を有する.また,毎秒2万枚の画像を取得できるため,Shear Waveの組織内における速度は,毎秒1〜10メートルとされるが,5,000ヘルツのフレームレート(1秒間に5,000枚の画像を取得)に対しても,余裕をもって対応可能である.従来のB-モード画像とSWEを用いて乳房超音波検査を行った症例のうち,手術もしくは針生検・細胞診で病理組織診断が確定した125例を対象とした病理組織像と定量値の相関に関する検討では,悪性腫瘍94例(非浸潤性乳管癌11例,乳頭腺管癌6例,充実腺管癌7例,硬癌62例,浸潤性小葉癌3例,粘液癌2例,浸潤性微小乳頭癌2例)における定量値の中央値は84.8kPa(2.9〜300),良性病変31例(乳管内乳頭腫6例,管状腺腫1例,葉状腫瘍1例,線維腺腫11例,乳腺症11例)の平均は,39.3kPa(9.2〜95.6)と両群間に明らかな有意差を認めた.SWEは,悪性腫瘍における定量値が大きい傾向にあり,良悪性の鑑別に有用である可能性が示唆された.一方,組織形等により,良悪性の鑑別が難しい場合も認められ,今後本検査のポジショニングに対するさらなる検討が必要である.