Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画11 体表:乳腺・甲状腺の硬さ評価2011

(S182)

副甲状腺腫瘍のエラストグラフィ評価

Ultrasound Elastography for diagnosis of parathyroid tumors

清松 裕子1, 池田 達彦1, 坂東 裕子2, 井口 研子2, 田中 優子2, 森下 由紀雄2, 東野 英利子2, 原 尚人2

Hiroko KIYOMATSU1, Tatsuhiko IKEDA1, Hiroko BANDO2, Akiko IGUCHI2, Yuko TANAKA2, Yukio MORISHITA2, Eriko TOHNO2, Hisato HARA2

1筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科, 2筑波大学大学院人間総合科学研究科臨床医学系

1Department of Breast, Thyroid and Endocrine Surgery, Tsukuba University Hospital, 2Institute of Clinical Medicine, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

キーワード :

【はじめに】
副甲状腺癌は従来の画像診断では良悪性の質的判定が非常に困難な病変とされている.手術術式は悪性病変の場合拡大切除が求められるため,術前の正確な評価が求められる.しかし播種の可能性のため穿刺吸引細胞診断は行われておらず,腫瘤の触診所見や高度の高カルシウム血症,骨病変など間接的な臨床データのみが術前診断に有用とされていた.近年,エラストグラフィにより組織弾性を比較的簡便に画像で表すことが可能になっており,すでに乳癌および前立腺癌などでは良悪性の鑑別診断に有用性が示されている.われわれはこれまでに超音波画像による縦横比が副甲状腺癌の診断に有用であることを示してきたが,甲状腺の硬さや甲状腺との位置関係,腫瘍の絶対的な大きさなどに所見は左右され,偽陽性な症例も少なからず存在した.そこで今回,副甲状腺癌術前診断に対するエラストグラフィの有用性を検討した.
【対象と方法】
2005年以降に当科における副甲状腺腫瘍症例を対象とした.B-モードで縦横比などから腺腫と診断し組織診断でも腺腫であった症例,B-モードで癌を疑うも組織では腺腫であった症例,B-モードで癌を疑い実際に癌であった症例,これらに対するエラストグラフィ所見を検討した.ただし超音波で良性と判断したが病理学的に悪性であった症例は認めていない.エラストグラフィは日立EUB-8500を用いた.副甲状腺の硬さは周囲組織すなわち接する甲状腺組織と比較し評価した.
【結果】
従来のB-モード所見では副甲状腺癌を強く疑ったが病理学的に良性であった症例では,副甲状腺病変はエラストグラフィにより甲状腺組織と同程度に軟らかい所見を呈した.副甲状腺癌の症例においては全例でエラストグラフィ上,腫瘍は甲状腺組織に比較し硬いと評価された.
【考察】
副甲状腺癌の組織学的特徴として,fibrous dense bandを多く含むことより,腫瘤が非常に硬くなる.我々は,これまでに超音波画像の縦横比を用いretrospective studyとprospective studyを行い,縦横比が大きい場合,癌の可能性が高いことを示してきた.この鑑別法は癌の術前診断として感度は高いが,良性であっても腫瘍径が大きい場合,測定上縦横比が大きくなる症例(false positive)が存在していた.我々はこの問題を解決すべく,従来の超音波画像の縦横比に加え,エラストグラフィを用いることにより術前に腫瘍の硬さを評価した.結果,副甲状腺癌はエラストグラフィで非常に硬い腫瘤像を呈すること,良性の場合腫瘍径が大きくても,通常の腺腫と同じように「柔らかい」腫瘤として描出されることが明らかとなった.今回の検討から,従来の超音波画像にエラストグラフィを加えることにより,より正確な術前診断に近づけることが示唆された.副甲状腺癌は稀な疾患であるが,今後症例数を積み重ねて診断基準の作成を目指したい.