Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画10 循環器:内科医と内科技師が学ぶ成人先天性心疾患

(S178)

心房中隔欠損のカテーテル治療前後の心エコー観察点-適応外例と合併症例から再検討-

Check Points before and after Transcatheter Closure of Atrial Septal Defect with Echocardiography - Consideration of Cases without Indication and Cases with Complications -

北野 正尚

Masataka KITANO

国立循環器病研究センター小児循環器科

Department of Pediatric Cardiology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

 心房中隔欠損(ASD)は成人期に最も多く遭遇する先天性心疾患の一つであり,高齢になるほど心不全,不整脈,肺高血圧などを発症,合併する.1997年から臨床使用が始まったAMPLATZER Septal Occluder(ASO)は治療成績が良好で,外科治療よりも侵襲が少ないことからカテーテルによるASD閉鎖術を標準的な治療法の一つにした.本邦でも2006年8月から2011年2月までの間に既に2600人以上のASD症例がASOによって閉鎖されている.しかし,少ないながらも合併症が生じているので,その適応評価,正確な留置と問題点の把握,留置後の経過観察は極めて重要である.それらの判断に最も威力を発揮するのは心エコー検査である.
 当院では,2005年1月から2011年1月の間にASDまたは卵円孔開存(11症例)の904症例にASO治療評価目的の経食道心エコー検査を施行した.その内の155症例(17%)が適応外と判断された.適応外の理由としては,38mm以上のASD 2症例,欠損孔周縁(Rim)の欠損114症例(下大静脈側Rim欠損40症例,バルサルバ洞側から上行大動脈側Rim欠損33症例,冠状静脈洞側Rim欠損16症例,下大静脈側から冠状静脈洞側Rim欠損23症例,他),多孔性ASDかつRim欠損19症例,静脈洞型ASDまたは冠状静脈洞型ASD 7症例,肺静脈還流異常合併3症例,他3症例であった.904症例の内485症例にASOを留置しており,その内の34症例は多孔性ASD(2-6欠損孔)であった.ASOの留置を試みたが,5症例は心房上壁を圧迫したため,3症例は下縁欠損でデバイスが安定しないため,2症例は中隔が断裂したため留置を断念した(2.0%).留置後の合併症としては,3か月後の冠動脈左房瘻が1症例,3か月後に左房ディスクの下縁が右房側に変位していたが,ディスクが中隔と癒着して短絡は消失していたものが1症例,心房細動となり電気的除細動を行ったものが2症例,一時的なWenckebach型房室ブロックが1症例などであった.
 海外では,ASO留置後の2大合併症として,デバイスの移動・塞栓(約0.5%)と心タンポナーデを含む心房壁の穿孔:Erosion(約0.1%)が報告されている.日本国内でもデバイス塞栓が5症例,心房壁穿孔が5症例といずれも発症しているので,如何にこれらの合併症が生じないようにかつできる限り様々な形態のASDをカテーテルで閉鎖できるかが肝要である.本講ではASOの安全性と有効性を念頭におきながら,その留置前,留置最中,留置後の心エコー観察点に関して概説する.