Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画10 循環器:内科医と内科技師が学ぶ成人先天性心疾患

(S177)

内科医のための区分診断法-心臓の解剖と区分診断

The Anatomy and segmental approach of congenital heart disease for Physician

富松 宏文

Hirofumi TOMIMATSU

東京女子医科大学循環器小児科

Pediatric Cardiology, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

【背景】
先天性心疾患(CHD)患者の多くが成人期を迎えることができるようになってきている.
これまでCHD患者の診断治療は小児科医が行ってきた.しかし,CHD患者が成人を迎えるとともに,糖尿病,痛風,高血圧,肥満,妊娠,分娩,癌など小児科医にとってなじみの少ない問題が生じてきている.したがって,今後はいかにして内科医や産婦人科医など小児科以外の専門医との協力体制をきづいていくかが重要な課題である.内科医などにもCHDの診断手順の概略を知ってもらうことが必要となっている.
【目的】
解剖学的構築異常であるCHDの診断方法について概説すること.
【基本的考え方の手順】
心臓を心房,心室,大血管の三つの要素に分ける.これら各要素の左右関係,前後関係,連結関係について順番に決定してゆく.これを区分診断法という.
A:各要素の定義
1.心房:下大静脈が流入する心房を右房と定義し,形態的には入口部の広い心耳を持つ.右房が右側にあれば正位,左側にあれば逆位とする.右房でない心房を左房とする.下大上静脈が欠損している場合,心房中隔がまったく存在しない場合などは,不定位とする.2.心室:心室形態からは,“三角おむすび型”,“キャッチャーミット型”などと表現される.したがって,房室弁から心尖部へ向かうライン(流入路)と心尖部から半月弁へ向かうライン(流出路)が形成する角度が大きい.内腔は肉柱が粗く大小不同である.一方左室は形態的には“砲弾型”,“きつねの尻尾型”と表現され,流入路と流出路がなす角度は右室に比べ小さい.内腔は肉柱が細かく右室に比べ平滑である.ただ,心尖部はすこし粗くなっている.心室の位置関係は主として左右関係をみる.このとき房室弁の高さで左右関係を見る.正常心では右室は右前,左室は左後ろに位置する.右室が右側にあるとき心室ループはDループであるという.
3.大血管:大動脈と肺動脈を大血管という.大動脈は“弓”を形成し,肺動脈は“弓”を形成することなく,半月弁からすぐ上で左右に分岐する.大血管の位置は半月弁のレベルで判断し,左右関係と前後関係を組み合わせて表現する.左右関係については大動脈が右にあればD,逆ならLとなる.さらに前後関係では胸壁に近いほうを前,体表面から深い方を後ろとする.正常心では肺動脈は大動脈に対して,左前に位置している.また,大動脈と肺動脈はらせん状に交わるため,“spiral”といい,D-spiralの場合は特別にnormal relation であることから“N”と表記する.
B:各要素の連結関係
4.心房−心室関係:右房→右室のように,心房と心室の関係が正常の場合“房室関係は整列(concordant)”といい,右房→左室のように異なったつながりのときを“房室関係非整列(discordant)”という.さらに,心房心室が1対1の関係だけでなく,両房室弁一側心室挿入,房室弁騎乗などがある.
5.心室−大血管関係:右室→肺動脈のように正しい連結の場合を“心室大血管関係整列”異なる場合は“心室大血管関係非整列”となる.また,両大血管一側心室起始や大血管騎乗などもある.
【まとめ】
 心臓を構成する各要素を診断し,さらにその連結関係を診断してゆくことによって,心臓の基本構築(骨組み)を診断する.その上で欠損孔の位置やサイズ,房室弁の形態やサイズ,半月弁の形態やサイズなどの詳しい形態について評価して行く.これらによりCHDの形態を正確に診断することができる.さらに,形態診断を行ったうえで,血行動態を評価する.