Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画9 血管:動脈エコー標準的検査法の確立

(S175)

末梢動脈エコーの標準的評価法の提案 : 下肢動脈について

The suggestion of the standard evaluation for the peripheral artery of the lower limbs by vascular ultrasoud

水上 尚子1, 野口 慶久1, 寺岡 幸美1, 澤田 七瀬1, 湯浅 敏典2, 高崎 州亜2, 荒田 憲一3, 木佐貫 彰4, 鄭 忠和3

Naoko MIZUKAMI1, Yoshihisa NOGUCHI1, Yukimi TERAOKA1, Nanase SAWADA1, Toshinori YUASA2, Kunitsugu TAKASAKI2, Kenichi ARATA3, Akira KISANUKI4, Chuwa TEI3

1鹿児島大学医学部歯学部附属病院臨床技術部 検査部門, 2鹿児島大学医歯学総合研究科循環器・呼吸器・代謝内科学, 3鹿児島大学医歯学総合研究科循環器・呼吸器・消化器疾患制御学, 4鹿児島大学医学部保健学科

1Division of Laboratory, Kagoshima University, 2Cardiovascular, Respriratory and Metabolic Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, 3Thoratic and Cardiovascular Surgery, Hepato-biliary-pancreatic Surgery, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, 4School of Health Science, Kagoshima University

キーワード :

【はじめに】
近年いわゆる生活習慣病と呼ばれる糖尿病や高脂血症などが発症の起因となる血管疾患が急増し,動脈硬化性病変の予防,診断,治療の重要性が高まるに従い,血管エコーの依頼件数も増加の一途をたどっている.また,末梢動脈では血管内治療の進歩と普及に伴い,血管エコーの役割は多様化し,診断だけでなく,治療に対する情報や治療効果の評価まで求められるようになった.下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療のガイドラインであるTASCⅡにおいても,血管エコーは病変評価の第一選択肢となっているが,実際の検査の手法や評価方法についてのガイドライン(標準化)は示されていない.ここでは,「末梢動脈の標準的評価法の提案」として,当院での評価手順や評価方法について紹介させていただき,検査法の標準化について会場の皆様とともに考えてみたい.
【探触子の選択】
腸骨動脈領域では3.5〜7.0Mhzのコンベックス型探触子を,大腿動脈以下では7.0Mhz以上のリニア型探触子の使用が基本的に推奨されるが,検査部位の深さに応じて適切な周波数,探触子を選択する.
【検査時の体位】
仰臥位にて施行する.膝窩動脈や下腿動脈検査時は,可能な場合は下肢を軽く外旋させて検査を施行する(股関節の可動性に留意する).
【検査部位の評価手順:スクリーニング検査】
①両総大腿動脈の観察
 同部位の血流速度波形をパルスドプラ法で計測し,有意な血流速低下がみられた場合は腸骨動脈領域を検索し,病変部位を同定する.
②総大腿動脈〜浅大腿,深大腿動脈分岐部の観察
③浅大腿動脈遠位の観察同部位の血流速度波形をパルスドプラ法で計測し,有意な血流速低下がみられた場合は浅大腿動脈内の病変部位を同定する.
④膝窩動脈遠位の観察同部位の血流速度波形をパルスドプラ法で計測し,有意な血流速低下がみられた場合は浅大腿動脈内の病変部位を同定する.
⑤後脛骨動脈末梢側,足背動脈の観察
 同部位の血流速度波形をパルスドプラ法で計測し,有意な血流速低下がみられた場合は前後脛骨動脈内の病変部位を同定する.
【評価方法】
・狭窄病変の同定カラードプラ法を併用すると狭窄,閉塞部位の同定が容易となる.狭窄率は面積狭窄率,径狭窄率にて算出する.形態による狭窄率算出が困難な場合は狭窄部の流速もしくは狭窄部と狭窄前の血流速比にて有意な狭窄の有無を推定する.・狭窄部より末梢側の血流評価狭窄による血流低下の程度,側副血行の評価などを血流速と血管抵抗指数により評価する.・評価項目断層像,カラードプラ法狭窄部の病変長と狭窄率,病変部位のエコー性状パルスドプラ法最大流速,血管抵抗指数(RI),加速時間(acceleration time: AT)
【治療を念頭においた評価】
・血管内治療時
・病変部位の中枢側断端の形態,穿刺予定部位の血管性状
・外科的治療時
・バイパス吻合に適する部位の同定,バイパス術に使用する血管の評価
【最後に】
現状では,評価する各指標の中には基準値としてまだ十分なevidenceが得られていないものも多い.今後は検査手法,評価方法の標準化をまず定義した後,複数の施設が参加して,各指標の基準値に関する横断的な検討を行う必要があると考える.