Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画9 血管:動脈エコー標準的検査法の確立

(S174)

超音波断層法による動脈瘤径の計測-動脈エコー標準的検査法の確立にむけて-

Measurement of the distance of aneurysm in the aorta and peripheral artery by two-dimensional ultrasound

山本 哲也1, 松村 誠2, 三村 優子1, 三原 千博1, 数野 直美1, 岡原 千鶴1

Tetsuya YAMAMOTO1, Makoto MATSUMURA2, Yuuko MIMURA1, Chihiro MIHARA1, Naomi KAZUNO1, Chizuru OKAHARA1

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

【はじめに】
一般に,動脈径が正常値の約1.5倍を超えた場合,瘤と診断され,手術適応も無症候あるいは慢性期では瘤の最大径,および瘤径の増大スピード等で決められている.大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインではCT検査において1年で5mm以上,径が増大する場合,破裂の危険性が高くなるため治療方針を決める際には最大径よりも瘤径の増大スピードを優先して手術治療の方針とされる.すなわち瘤径を精度よく計測することは極めて重要であり,簡便で無侵襲的に実施できる超音波検査の役割は大きい.今回,我々は超音波断層法による動脈瘤径をCT検査と比較し,超音波検査による動脈瘤径計測の有用性を検討した.
【対象】
対象は2010年9月から12月までに腹部・末梢動脈瘤の精査,及び経過観察を目的に超音波検査とCT検査を実施し,画像不良による計測困難,及び不備例を除外した53例(男性46例,女性7例,平均年齢73.8±8.8歳)である.動脈瘤径の測定部位は73病変(腹部52例,腸骨部20例,大腿部1例),その内33病変はステントグラフト留置術後である.
【方法】
触診にて動脈の走行を大まかに確認した後,コンベックス型探触子を用いて短軸断面で動脈の走行を確認,瘤の最大部位を同定し,最大短径を計測した.計測時の時相は,測定部位の動脈が拍動し最大となる時相を選択,計測ポイントは各断面で外膜の外側-外側を計測した.それぞれ得られた瘤径をCTによる計測値と比較し検討した.使用装置は東芝社製aplioXG,探触子は3.5MHzコンベックス型探触子を使用し,装置の調整はそれぞれ最適な状態とした.
【結果】
超音波で計測した瘤の最大短径は平均43.5±13.2mmでCTによる計測値43.7±12.7mmと有意な差を認めず,両者の差の平均は1.86±1.63mm(最大8mm,最小0mm)であった.また,両者間には高い正相関(r=0.98, p<0.001)が認められた.
【考察】
今回,超音波検査とCT検査における動脈瘤の瘤径計測値には,大きな違いは認められなかった.これは検者が測定断面を設定する際,多方向から観察し瘤の走行を立体的にイメージして記録しているため,瘤の最大部位を適確に捉えていた可能性が高いと考えられた.
【結語】
超音波断層法による動脈瘤径の計測はCTによる計測値と同等であり,治療方針決定に際して有用である.