Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画9 血管:動脈エコー標準的検査法の確立

(S174)

腎動脈超音波の標準的検査法

The standard procedure of the renal artery ultrasonography

佐藤 洋1, 石井 克尚2

Hiroshi SATO1, Katsuhisa ISHII2

1関西電力病院臨床検査部, 2関西電力病院循環器内科

1Clinical Laboratory, Kansai Electric Power Hospital, 2Cardiology, Kansai Electric Power Hospital

キーワード :

【序言】
腎臓は,心拍出量の約25%に相当する血流量のある臓器であり,その血流,特に腎動脈血流を評価する計測することで様々の評価が可能とされている.なかでも,腎動脈狭窄に伴う腎血管性高血圧評価と腎実質障害評価の大きく2つの柱がある.検査手技は両者でほぼ同様である.血流評価だけでなく腎形態の評価も重要である.腎血流の超音波検査法とその評価法について現時点で標準的な検査方法とされているものについて述べる.
【探触子の選択】
腹部動脈および分枝血管の観察に用いる探触子は3〜6MHzのコンベックス型と2.5〜3.5MHzのセクタ型を用いることが多い.
【前処置】
絶食状態で検査した方が腎動脈起始部の観察は容易である.
【主な計測ポイント】
主な計測ポイントは,①腹部大動脈,②腎動脈起始部,③腎内区域動脈(上,中,下極),④腎サイズである.
【記録の実際】
仰臥位を基本とするが,背側より腎臓をアプローチした方が観察しやすい場合には側臥位で検査する.またいずれもミリメートル単位の動脈の血流波形を計測するので必要に応じ息止めをして検査する.また狭窄部で高速血流となる場合には,パルスドプラ法だけでなく連続波ドプラ法も用いて最大流速を計測したい.またドプラ入射角は60度以内となるようにアプローチ方法を調整する.また観察部位ごとに適切な装置条件設定が異なるのであらかじめ検査部位毎にプリセットを作成しておくと効率よい検査ができる.検査時間は20-30分程度を要する.
【腎動脈狭窄の診断基準】
腎動脈狭窄の判断基準には種々のものがあるがACC/AHAガイドラインでは,腎動脈狭窄(径狭窄60%以上)の直接所見は,腎動脈収縮期最大流速(peak systolic velocity:PSV)>180 cm/sec,腎動脈収縮期最大血流/大動脈収縮期最大血流(renal-aortic-ratio:RAR)>3.5,狭窄後の乱流の出現とされる.腎動脈狭窄部血流を計測する際には,できるだけ連続波を用いてドプラ入射角をできるだけ小さくなるように調整する.また間接所見としては,腎内区域動脈血流の収縮早期ピーク波(early systolic peak:ESP)の欠如,収縮期加速時間(acceleration time:AT) > 0.07 sec,平端な血流波形,Resistance Index(RI)の左右差 0.15<とされている.ただし例外事項もある.腎動脈狭窄が高度であっても,腎機能が極端に低下している場合には,腎動脈収縮期最大流速は高値を示さない.また,高度大動脈弁狭窄や高安動脈炎でみられる異型大動脈縮窄例では,腎動脈狭窄はなくとも腎内区域動脈血流AT>0.07sec.となる.その場合には腹部大動脈血流ですでにATが延長しているので腎動脈よりも中枢側の狭窄性病変の存在を推定することができる.
【腎実質障害評価】
腎実質障害が進行すると,末梢血管抵抗が増加することにより,拡張期血流が低下することが知られている.記録時の注意点としては血流シグナルが乏しいので,血流波形の描出が困難となる.繰り返し周波数を下げ,フイルターを下げて,低流速の血流描出能を上げて対応する.腎動脈狭窄症例において腎区域動脈RI>0.8以上では,血行再建をしてもその後の腎機能の改善は期待できないという報告もある.ただし,高度大動脈弁閉鎖不全症や,動脈管開存症例では,腎機能が正常であっても腎区域動脈血流RI>0.8となる症例がある.そのような場合には,腹部大動脈血流の拡張期波が逆流しているので注意して観察する.
【まとめ】
腎動脈超音波検査は,検査行程が多く検査部位ごとに至適条件が異なることに留意して正しい手技で検査を行いたい.