Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画9 血管:動脈エコー標準的検査法の確立

(S173)

IVRの立場から動脈エコーの標準化に求めるもの

Proposed reporting standard of vascular ultrasonography for patients treated by interventional radiology

東浦 渉1, 吉川 公彦1, 平井 都始子2

Wataru HIGASHIURA1, Kimihiko KICHIKAWA1, Toshiko HIRAI2

1奈良県立医科大学放射線科, 2奈良県立医科大学中央超音波内視鏡部

1Radiology, Nara Medical University, 2Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

近年,増加の一途を辿っている閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis obliterans:以下ASO)など末梢動脈疾患(peripheral arterial disease: 以下PAD)のスクリーニング検査や治療計画,治療後の評価を行う際に,動脈エコーは低侵襲検査として重要な役割を担っている.薬物運動療法では効果が無く生活に支障をきたす間歇性跛行や重症虚血肢など積極的な血行再建の適応と考えられる症例に対し,IVRや外科的手術による血行再建が施行されるが,一般的に血行再建の方法は,2007年に発表されたPAD診療に関するガイドラインであるTransAtlantic Intersociety Consensus (TASC)-IIに基づいて決定されることが多い.腸骨動脈領域では総腸骨動脈狭窄や外腸骨動脈の短区域(<3cm長)狭窄ではIVRによる治療が選択されるべきであり,総腸骨動脈から外腸骨動脈におよぶ長区域完全閉塞や腸骨動脈から総大腿動脈におよぶび慢性病変,治療適応となる動脈瘤を有するPADでは外科的血行再建が選択されるべきであると述べられている.TASC-IIでは片側の総腸骨動脈閉塞もしくは外腸骨動脈閉塞もIVRによる治療が望ましいとされており,閉塞例についてもIVRへと適応が拡大されている.2005年以降,腸骨動脈閉塞病変に対するステント留置を中心としたIVRの治療成績が多数報告されており,IVRでは治療困難とされるTASC-II C/D病変に対する良好な治療成績も報告されており,長区域閉塞性病変など複雑病変に対してもIVRを行う施設が多くなっている.大腿膝窩動脈病変においては,TASC-IIでは浅大腿動脈の単独狭窄(病変長10cm以下),単独閉塞(病変長5cm以下)がA (IVRを選択すべき病変)に,5cm長以下の多発狭窄もしくは閉塞,膝下膝窩動脈を含まない15cm長以下の単独狭窄もしくは閉塞,5cm長以下の高度石灰化した閉塞,膝窩動脈の単独狭窄がB(IVRが好ましい病変)に分類され,TASC-Iと比較して,IVRを選択すべきもしくは好ましい病変が著しく拡大された.現在,本邦では正式に大腿膝窩動脈病変に対し使用できるステントはないが,複数のデバイスが臨床治験されており,今後,本法でもIVRの適応が拡大し,症例が増加するのは間違いない.超音波検査は狭窄および閉塞の形態診断のみならず,流速を評価することで狭窄率の予測に役立つ.また動脈の流速評価により血行動態の評価も可能である.さらに閉塞端の形態や動脈穿刺部の石灰化やプラークの有無を高い空間分解能で評価することが出来,IVR施行時のアプローチ決定にも有用である.また,超音波検査は治療後の再狭窄評価にも有益であるが,ステント留置後はステント内の流速は上昇し,流速をもとにした再狭窄の評価には注意を要する.今回の発表ではTASC-IIの概説と治療適応および治療方針決定における超音波検査のポイントをIVRを施行する視点から述べ,治療後の評価法の問題点についても言及する予定である.