Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画7 消化器:消化管超音波検査を普及させるには?

(S166)

消化管超音波検査を普及させるには? -放射線科医の立場から-

How can we promote the use of gastrointestinal ultrasonography?  - from the viewpoint of a radiologist -

本田 伸行

Nobuyuki HONDA

寺元記念病院画像診断センター

Diagnostic Imaging Center, Teramoto Memorial Hospital

キーワード :

【はじめに】
 消化管超音波検査が普及しない最大の要因は,依頼する臨床医のUSに対する無知・無理解だけではなく,CTが容易に施行できる環境が整っていることが大きいと思われる.被曝や検査費用のことを考えなくてよいのであれば,多くの医師はUSよりもCTを優先するはずである.その理由としては,機器の普及率,短い検査時間,非侵襲性,情報量の多さ,立体的把握の容易さ,高い客観性,などが挙げられる.CTもマルチスライスCTの時代となり,任意の断面像の作成や3D画像などが一般的になり,CT colonographyを大腸スクリーニング検査法として普及させようとする活動も活発になっている.また,蠕動運動がみられるため消化管領域には不向きとされてきたMRIも,撮像時間の短い撮像法の開発によって新たな展開をみせている.今回は,放射線科医とUS診断の歴史的関わり,および腹部症状がある場合とない場合の消化管超音波検査の進め方についての私見を述べてみたい.
【 放射線科医とUS診断の歴史的関わり】
 画像診断の中心的役割を担う放射線科医でUSを専門にしている者はごく少ない.この原因としては,USとCTが1970年代にほぼ並行して装置の開発と普及が行われ,当時の放射線科医はCTに夢中(振り回され?)になり,USを重視してこなかったという歴史的背景が大きい.1980年代にはMRIが臨床に登場し,放射線科医はますます忙しくなってしまった.消化管X線検査も放射線診療技師が行う施設が多くなっているが,このことも放射線科医の業務量の増加と無関係ではない.超音波検査に従事する医師数の減少に伴い,超音波検査士への期待値はますます増大している.超音波検査士研修ガイドラインでも消化管の代表的な疾患の大半が研修項目に入っているのは心強い.
【腹部症状がある場合】
 頻度的にも消化管病変が原因であることが多く,CTの読影に際しては消化管にも着目するのは読影医の基本である.しかしながら,USでは実質臓器ばかりに着目し,消化管を疎かにしている検者も少なくない.多くの臨床医はCTをするのであればUSは不要と考えており,「消化管の超音波検査を依頼してよかった!」という経験も乏しい.精密検査法としてUSが威力を発揮するためには,消化管壁の厚さと層構造が解析できるような鮮明な画像が得られることが必須条件となるが,蠕動運動や腸管内容物の動態観察といったCTでは得られない情報を提供し続けることで,確実に消化管超音波検査の有用性は認知されるはずである.
【スクリーニング検査の場合】
 スクリーニングとして腹部画像検査を行う場合は,まずUSを行い,必要に応じてCT(婦人科領域はMRI)を追加するという手順に異論はないと思うが,施設の都合でUSを省略して即CTを行う施設も多く,消化管超音波が普及しない最大の要因と思われる.スクリーニング超音波検査で進行胃癌や大腸癌が見つかることもまれではないので,被験者の体型などに左右されず確実に描出できる腹部食道や胃前庭部,上行結腸と下行結腸ぐらいはルーチンで確認すべきだと思う.
【まとめ】
 消化管超音波検査も確実に認知され,ゆっくりではあっても確実に普及している.この功績は座長の畠先生,長谷川先生が中心となって全国展開されている消化管エコーセミナーの開催などが大きく寄与していることは間違いない.むしろ今以上に急速に普及が進むことで,低いレベルで消化管超音波検査が認知されてしまうことを心配する.