Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画7 消化器:消化管超音波検査を普及させるには?

(S165)

消化管超音波検査を普及させるには?-消化管エコー研究会の活動を通して-

Ways to promote gastrointestinal ultrasound -proposals based on the questionnaire data from the participants of the GI ultrasound seminar-

長谷川 雄一1, 西田 睦1, 山下 安夫1, 松原 馨1, 浅野 幸宏1, 林 健太郎1, 橋本 英久1, 廣辻 和子1, 岩崎 信広1, 竹之内 陽子1, 高須賀 康宣1, 崎田 靖人1, 倉重 佳子1, 平田 厚人2, 太田 裕3

Yuichi HASEGAWA1, Mutsumi NISHIDA1, Yasuo YAMASHITA1, Kaoru MATSUBARA1, Yukihiro ASANO1, Kentaro HAYASHI1, Hidehisa HASHIMOTO1, Kazuko HIROTSUJI1, Nobuhiro IWASAKI1, Youko TAKENOUCHI1, Yasunobu TAKASUGA1, Yasuhito SAKITA1, Keiko KURASHIGE1, Atsuhito HIRATA2, Yutaka OHTA3

1消化管エコー研究会, 2東芝メディカルシステムズ株式会社, 3株式会社ユー・エス・アカデミー

1Gastrointestinal Ultrasound Seminar, 2Ultrasound Systems Division, TOSHIBA Medical Systems Corporation, 3U・S・Academy Corporation

キーワード :

【はじめに】
消化管超音波検査の有用性を広く知らしめるために,2004年12月消化管エコー研究会を設立し,走査技術から診断ポイントを軸に全国各地で講演活動を展開してきた.開催地は北海道,東京,大阪,福岡を中心に各都道府県を巡回し,現在まで開催回数は43回,延べ参加者は4000名を超えるに至った.今回は,研究会参加者のアンケート集計結果を背景に消化管超音波検査の普及についての現状報告と問題点を浮き彫りにし,今後の課題を明らかにしたいと考える.
【アンケート結果から見る消化管エコーの現状と問題点】
①回収されたアンケート総数は4346件であり,重複参加も含まれる.回答数のほぼ半数が首都圏および関西地区によるものである.参加者の職種内訳では臨床検査技師が圧倒的に多く82%を占めており,臨床現場で普及のキーパーソンとなる事が明らかとなった.以下,診療放射線技師10%,医師8%であった.(fig.1)
②消化管エコー検査の実施率は53%とほぼ半数であり,消化管エコーが他の臨床領域に比較し普及していない実態が明らかとなった.(fig.2)
③消化管エコー実施における問題点としてスキル不足をあげる方が最も多く,次いで装置性能と検査オーダー自体がない・・・の順であった.(fig.3)
スキル不足については,本人の努力次第で改善が期待でき,装置性能については施設の問題もあるが,改善は期待できる.最大の壁となるのが検査オーダーであり,臨床側(医師)の消化管に対する超音波検査の有用性を認識してもらわなければ改善は期待できないであろう.
④研究会に対する今後の要望は,ライブデモ,ハンズオン,症例検討・・・の順であり,前項のスキル不足を補足するために,より実践的な内容となる走査テクニックさらには得られた画像についての評価方法を望む結果であった.
【今後の課題】
多くの臨床現場で検査業務にあたる技師については,技師の教育段階での超音波検査に対する教育体制を整備させることで,消化管に限らず将来の超音波検査全体の充実した発展へ寄与することが出来るのではないかと考える.消化管エコーの実施率が低いこと,つまりはオーダーをする医師の消化管超音波への認識を変革する為にも,同様のことが言えるのではないか.走査技術に関しては標準走査法が確立されていないこと,他臓器に比較し正常像の把握が困難なこと,ガス像が多いことから消化管を検査対象としておらず,積極的に病変検出に臨んでいる施設も少ない事からも,未だ普及に至らない一因となっているのだろう.本研究会においては,系統的走査法(畠二郎ほか:体外式超音波検査による消化管のスクリーニング的検査法とその診断能.Jpn J Med Ultrasonics 19:27-34,1992.)を走査方法の基本と定め,全国展開する中でハンズオン講習を行うことにより普及に努めてきた.いまだハンズオン講習の要望は多く,消化管超音波検査の難易度の高さもうかがえるが,受講者の多くを占める検査技師が消化管を超音波で評価する意義を認識している裏付けにもなるだろう.画像解析に関しては,日本超音波医学会の消化管診断基準小委員会により鋭意検討中であり,公告により全国的な評価方法の統一化が図られるであろう.こうしたセッションが企画されたことに今後の期待を寄せるが,日本超音波医学会としての将来展望も問いたい.