Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画6 消化器:肝腫瘍造影超音波 過去4年の総括

(S162)

肝細胞癌手術時の副病変に対する術中造影超音波の診断能とその意義

Detectability and utility of contrast-enhanced intraoperative ultrasonography for small HCC

光法 雄介, 佐藤 公太, 伴 大輔, 入江 工, 野口 典男, 工藤 篤, 中村 典明, 田中 真二, 有井 滋樹

Yusuke MITSUNORI, Kota SATO, Daisuke BAN, Takumi IRIE, Norio NOGUCHI, Atsushi KUDO, Noriaki NAKAMURA, Shinji TANAKA, Shigeki ARII

東京医科歯科大学肝胆膵・総合外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
肝細胞癌に対する切除術は根治性の高い治療法であるが,術後の早期再発も問題となっている.その原因のひとつとして,主病変以外の小病変の取り残しが考えられる.よってこれらの可及的な切除が望ましく,そのためには,手術時に診断能の高い検査が必要となる.今回われわれは,術中造影超音波の特に小病変に対する検出能と鑑別診断能,さらに予後への影響について検討した.
【対象・方法】
2007年8月から,2009年12月までの,術中造影超音波を施行した,肝細胞癌肝切除症例,114例を対象とした.造影剤はソナゾイド®を使用し,0.5ml/回に統一して投与した.使用機器は東芝のXario XGで,プローブは術中専用のPLT-705BTH(7MHz)を使用した.造影モードはpulse subtraction-lowモードで,trapezoid scanを行なった.術前には血管造影CT,ダイナミックCT等による評価を行った.術中にはまずBモード超音波で観察し,その後造影を行い,血管イメージング,クッパーイメージングを行った.クッパーイメージでは病変とともに全肝を検索し,新たに病変を認めた場合は,適宜造影剤の再投与を行い,defect re-perfusionイメージングで腫瘍血管ありと判断したものを切除した.検出能の検討では,切除標本の病理診断で肝細胞癌と診断されたものを,術前造影CTと術中造影超音波で比較した.鑑別診断能の検討では,術中造影超音波で肝細胞癌と診断・切除したもののうち,1センチ以下のもの15結節について,真の肝細胞癌であったかを切除標本の病理診断と比較した.予後への影響の検討では,病変の遺残なしとした初回切除症例について,術中造影超音波を導入していない時期の94例と,導入してからの上記期間における97例において,術後観察期間を統一してカプランマイヤー法にて無再発生存率を比較した.
【結果】
検出能:10.5%にあたる12例において,術中造影超音波のみで小病変を検出した.病変はいずれも1センチ以下の小さなもので,分化度はさまざまであった.また,12例中7例においては,主病変とは別の亜区域に病変を認め,部分切除の追加を必要とした.鑑別診断能:15結節のうち11結節が肝細胞癌であった.また,術中造影超音波のみで過剰診断したものは1例であった.以上より,術中造影超音波の診断精度は非常に高いことが示唆された.予後への影響:病理学的診断によるStage IVにおいて,術中造影超音波を導入・施行した群の方が,有意に良好な無再発生存率であった.
【考察】
肝細胞癌に対する手術では,とくにStageⅣのような多発病変の場合,術中造影超音波によってさらに小病変が発見できる可能性が高いと考えられる.なおかつ,それらを可及的に切除することで,予後の改善が期待できると考えられる.一方,ごく小さい病変では,血流による診断には限界もあると思われる.
【結語】
肝細胞癌に対する術中造影超音波は,高い診断精度で病変の検出に有用であり,特にStage IVの早期再発予防に寄与することが示唆された.