Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別演題企画6 消化器:肝腫瘍造影超音波 過去4年の総括

(S162)

Sonazoid造影超音波が肝細胞癌診療に与えたインパクト

Impact of Sonazoid-enhanced ultrasound on treating hepatocellular carcinoma

今井 康晴

Yasuharu IMAI

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
2007年1月にSonazoidが保険収載となり4年間が過ぎた.その間,機器の進歩とともにSonazoid造影超音波(CEUS)の撮像方法は定まりつつあり,臨床的意義についても明らかになってきた.今回,2007年からこれまで当科にて肝腫瘤性病変に対して施行したCEUS,延べ2426例のうち肝細胞癌,延べ1353例についてretrospectiveに解析し,肝細胞癌診療におけるCEUSの位置づけについて検討した.
【方法】
対象は,当科にて2007年1月以降にCEUSを行った肝細胞癌症例,延べ1353例.超音波装置は,東芝APLIOまたは日立EUB-8500またはHiVision900を用いた.Sonazoidは0.3〜1.0ml/bodyを静脈注射し,投与1分までを血管相,10分以降をKupffer相とした.通常は,M.I. 0.2〜0.3で撮像したが,高エコー腫瘤や低音圧造影modeで描出不良の腫瘤に関しては適宜高音圧で撮像した.EOB-MRIはSIEMENS社製Magnetom AVANTO 1.5Tを用いて,脂肪抑制T1強調画像によるdynamic studyはVIBE sequenceで撮像した.
【成績】
(1)B modeのみによる肝細胞癌検出率はCTAPで検出されたうちの66%のみであったが,CEUSを追加することで72%まで増加した.(2)血管造影下CTで典型的肝細胞癌像を呈する結節のCEUS所見は,血管相で83.3%に高エコー,13.0%に等エコー,Kupffer相では96.3%に欠損像を認め,高い一致率であった.(3)EOB-MRIで乏血性肝細胞性結節として描出され,組織学的に肝細胞癌と診断された37結節についてCEUSと血管造影下CTを比較すると,CEUS血管相とCTHAとの一致率はCEUS 高エコーで50%,一部高エコーで100%,等エコーで50%,低エコーで81%であった.不一致の原因は主にCEUSの方がCTHAより血流検出感度が良いためと考えられた.CEUS Kupffer相とCTAPとの一致率は,CEUS 低エコーで80%,一部低エコーで100%,等エコーで72.7%と高い一致率であった.また,37結節中CEUS Kupffer相等エコーであった22結節のCEUS 血管相の所見は,高エコーが1結節,等エコーが9結節,低エコーが12結節であった.(4)RFA穿刺ガイドでは,B mode描出不良結節や治療後病変の再発部位の認識が可能となり,確実に治療できた.(5)RFA効果判定では,残存腫瘍の検出に関しては有用であったが,治療した腫瘍の辺縁が不明瞭な場合にマージンの判定が困難となるため,撮像modeの工夫が必要と考えられた.(6)TACE効果判定では,早期から治療部位における腫瘍残存の診断が可能であり,さらに残存部位への局所治療の追加を確実に行うことができた.
【結論】
CEUSは肝細胞癌の検出においてはCTAP,EOB-MRIに劣るが,質的診断に関しては血管造影下CTとほぼ同等と考えられた.また,肝細胞癌の治療支援としての有用性が高かった.今後,CEUSを積極的に肝細胞癌診療へ導入することにより,肝腫瘍生検,血管造影下CTなどの侵襲的検査を行うことなく,治療対象となる病変を判断できる可能性が強く示唆された.