小川 眞広¹, 三浦 隆生¹, 塩澤 克彦¹, 阿部 真久¹, 中河原 浩史¹, 杉谷 雅彦², 高山 忠利³, 石田 秀明⁴, 山本 敏樹¹, 森山 光彦¹

Masahiro OGAWA¹, Takao MIURA¹, Katsuhiko SHIOZAWA¹, Masahisa ABE¹, Hiroshi NAKAGAWARA¹, Masahiko SUGITANI², Tadatoshi TAKAYAMA³, Hideaki ISHIDA⁴, Toshiki YAMAMOTO¹, Mitsuhiko MORIYAMA¹

¹駿河台日本大学病院内科, ²日本大学医学部附属板橋病院病理学教室, ³日本大学医学部附属板橋病院消化器外科, ⁴秋田赤十字病院超音波センター

¹Gastoroentererology and Hepatology, Nihon University School of Medicine, ²Department of Pathology, Nihon University School of Medicine, ³Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, ⁴Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
超音波造影剤Sonazoidが認可されて以来約4年が経過した．この間種々の有用性が報告されるようになったが肝細胞癌に対する診断に最も使用されていると考えられる．超音波の高い空間分解能のB-mode情報に加えSonazoidを用いた造影超音波検査は微細な血流情報とさらには網内機能を用いた情報が得られ非常に有効であると考えられる．特に微細な変化は病理組織学的所見をよく反映いると考えられるため今回我々は，切除症例において腫瘍の病理組織学的所見と造影超音波所見を比較検討したので報告する．
【方法】
対象は2007年1月から2010年10月までの間に駿河台日本大学病院で術前にSonazoidを用いた造影超音波検査が施行された切除症例52症例60結節である．使用装置はGE横河メディカルシステムLOGIQ7，LOGIQ E9，使用探触子4C，C1-5，9Lである．造影方法sonazoid0.015ml/kgまたは0.5ml/bodyの急速静注で行った．造影modeはCPI （Coded phase inversion mode），phase inversionのTissue harmonic B-modeである．造影剤注入後約40秒までをarterial phaseとし，以後2分までをportal phase，10分以降をpost vascular phaseとし，肝実質と造影剤の残存を比較し欠損像が得られない症例では随時観察時間を延長した．arterial phase における腫瘍血管の評価と腫瘍濃染像の有無，portal phaseに見られる腫瘍濃染の持続の程度，post vascular phaseにおける欠損領域の形態を病理組織学的な腫瘍肉眼分類，腫瘍発育形式，被膜，被膜浸潤，腫瘍分化度について比較検討を行なった．
【成績】
腫瘍分化度は腫瘍濃染の程度，腫瘍血管の血管構築，被膜および被膜浸潤の有無と腫瘍発育形式はhaloの有無とvascular imageからperfusion imageの腫瘍濃染のパターンと腫瘍濃染持続時間に関与していると考えられた．腫瘍濃染像と血管構築は，高分化から中分化に変化するほど腫瘍濃染と腫瘍血管が増加するが低分化型になると腫瘍血管の途絶や欠損像が出現していた．腫瘍辺縁（周辺）に認めるhaloは全てが線維性被膜の形成を示すものではなく周囲の圧排による変化も含まれるため造影効果の差が腫瘍の発育形式や，浸潤範囲を反映しており造影検査を行なうことでより詳細な進展様式が把握できることが確認された．また腫瘍肉眼分類は腫瘍部と非腫瘍部の境界が明瞭となるpost vascular phaseの欠損領域が最も反映していた．
【結論】
Sonazoidを用いた造影超音波検査は組織学的所見を良く反映しており肝細胞癌における精密検査として極めて有用であると考えられる．